日産 プロパイロットの進化史 誕生からハンズオフ走行まで全解説
日産プロパイロットは2016年のセレナ初搭載から、軽自動車デイズ、ハンズオフ走行のプロパイロット2.0搭載スカイラインを経て、2027年度投入予定のAI搭載次世代モデルへ進化してきた。10年の変遷を解説する。
高速道路の渋滞にはまり、ブレーキとアクセルを延々と踏み直す。長時間の巡航で、車線の中央を保つことに神経をすり減らす。日産が2016年にセレナへ積んだ「プロパイロット」は、この2つのストレスを減らすための技術として生まれた。それから約10年、プロパイロットはミニバンから軽自動車、プレミアムセダンへと車格を超えて広がり、いまはAIを積んだ次世代モデルへの転換点に立っている。
2016年、セレナから始まったプロパイロット
2016年8月24日、日産はフルモデルチェンジした5代目セレナを全国一斉に発売した。このセレナに搭載されたのが、同一車線自動運転技術「プロパイロット」だ。日産によれば、約30〜100km/hの車速域で先行車両との車間距離を保ちながら車線中央を走行するようステアリング操作を支援する機能は、ミニバンクラスとして世界初だった。
プロパイロットの設計思想は明快だ。高速道路の渋滞走行では、前走車が完全に停止すればシステムが自動でブレーキをかけて停車し、ドライバーがブレーキを踏み続けなくても停止状態を保持する。前走車が発進すれば、ドライバーの簡単な操作だけで追従走行を再開する。長時間の巡航走行でも、設定した車速を上限に車間距離と車線中央の維持をシステムが引き受ける。運転そのものを奪うのではなく、ドライバーが繰り返してきた単調な操作を肩代わりする設計だ。
同時に、踏み間違い防止アシストやハンズフリーオートスライドドアを備えた期間限定の特別仕様車「プロパイロットエディション」も用意された。運転支援を持ち味とした特別モデルを設定したこと自体が、日産がこの技術に賭けた本気度を物語っている。
ノートへの展開、そして軽自動車デイズへ
セレナでの実装からわずか1年後の2017年9月1日、日産はノートの仕様を向上させ、高速道路などの長距離走行でドライバーの負荷を減らす「インテリジェント クルーズコントロール」と、意図せず車線を逸脱しそうな場合に車線内へ戻す操作を支援する「インテリジェントLI」を新たに採用した。あわせて緊急ブレーキの性能向上やハイビームアシストの標準採用も進めており、ミニバンで培った運転支援の考え方を、より身近な価格帯のコンパクトカーへ引き継ぐ動きだった。
そして2019年3月28日、日産は2代目デイズをフルモデルチェンジし、軽自動車として初めてプロパイロットを搭載した。渋滞走行では前走車との車間距離を制御して停止状態を保持し、巡航走行では設定車速を上限に車線内走行をサポートする。仕組み自体はセレナと同じだが、軽自動車の限られたコストと車体サイズの中でこれを実現した点に意味があった。デイズは日産と三菱自動車の合弁会社NMKVのマネジメントのもとで日産が企画・開発した車種であり、同じ2019年3月28日には三菱のeKワゴン・eKクロスにも運転支援システムがパッケージオプションとして設定された。三菱側での名称は「MI-PILOT」だが、開発の根はプロパイロットと同じ木から伸びている。
軽自動車という誰もが手に取りやすいクラスにまで運転支援技術が下りてきたことは、プロパイロットが特別な装備ではなく標準的な安全思想になりつつあることを示していた。
プロパイロット2.0が実現したハンズオフ走行の仕組み
プロパイロットの進化を語るうえで最大の転換点は、2019年に登場した「プロパイロット2.0」だ。日産は2019年5月16日にこの新システムを技術発表し、同年7月16日には搭載車となる新型スカイラインを発表、9月から全国で発売した。1957年に初代が誕生し、62年の歴史を持つ日産を代表するプレミアムスポーツセダンに、最新の運転支援技術を積むという象徴的な選択だった。
初代プロパイロットが単一車線での追従走行支援にとどまっていたのに対し、プロパイロット2.0はナビゲーションシステムと連動したルート走行と、同一車線内でのハンズオフ走行を世界で初めて同時に実現した。目的地を設定して高速道路の本線に合流するとナビ連動ルート走行が始まり、周囲360度のセンシング情報をもとに、追い越しや分岐に向けた車線変更のタイミングをシステムが判断してドライバーに提案する。ドライバーがハンドルに軽く手を添えてスイッチで承認すれば、車線変更や元の車線への復帰もスムーズにこなす。
この精度を支えているのが、カメラ・レーダー・ソナー・GPS・3D高精度地図データ、そしてドライバーの前方注視を監視するドライバーモニターカメラを組み合わせた複合センシングだ。ただしハンズオフが常に可能なわけではない。対面通行路やトンネル内、急なカーブ、料金所や合流地点の手前では手放し運転はできず、該当区間に近づくとシステムが事前にドライバーへ知らせる設計になっている。万一ドライバーが警報に反応せずシステムが緊急停止した場合には、「プロパイロット緊急停止時SOSコール」が専用オペレーターへ自動で接続する仕組みも備えた。
技術だけでなく車両自体も進化した。プロパイロット2.0を搭載したスカイラインは3.0L V6ツインターボエンジンを新たに搭載し、歴代スカイライン史上最高となる400馬力の「400R」もラインアップに加えている。運転支援技術の進化と、走る歓びを支えるパワートレインの刷新を同時に打ち出した点は、日産が「技術の日産」を体現する車種としてスカイラインを選んだ理由でもある。

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駐車支援への広がり プロパイロット パーキング
本線走行の支援とは別に、日産は駐車操作そのものを自動化する「プロパイロット パーキング」も展開している。4つの高解像度カメラと12個のソナーを組み合わせ、カメラが駐車枠を検知し、ソナーが他の車両や障害物を検知することで駐車可能なスペースを特定する。ドライバーがスイッチを操作するだけで、アクセル・ブレーキ・ステアリング・シフトをシステムが自動制御し、縦列駐車や車庫入れをこなす。メモリー機能を備えた車種では、GPS情報と路面の特徴を記録し、よく利用する場所付近での自動起動と正確な駐車位置検出も可能になっている。
プロパイロット パーキングは、リーフやアリア、サクラ、エクストレイル、セレナなど複数の車種に順次採用が広がっている。本線走行の負担を減らすプロパイロットと、駐車という別のストレスを減らすプロパイロット パーキングが両輪となり、日産の運転支援技術は「走る」から「停める」まで領域を広げてきた。
AIが運転支援を変える 次世代プロパイロットの挑戦
2025年9月22日、日産は2027年度の国内投入を予定する次世代プロパイロットの開発試作車によるデモンストレーションを東京・銀座で実施した。電気自動車のアリアをベースにした試作車が、新橋や銀座周辺の複雑な交通環境を走行する様子を公開したのだ。
この次世代プロパイロットの核心は、イギリスのAIスタートアップWayve社が開発した「Wayve AI Driver」と、次世代LiDARによる「Ground Truth Perception」技術にある。試作車にはカメラ11個、レーダー5個、次世代LiDARセンサー1個が搭載され、周囲の状況変化そのものを学習するエンボディドAIが、経験を積んだドライバーのような判断を目指す。従来のプロパイロットが決められたルールに沿って車両を制御してきたのに対し、次世代プロパイロットは状況の解釈そのものをAIに委ねる点で設計思想が大きく異なる。
日産のチーフ テクノロジー オフィサーを務める赤石永一は、「日産は高速道路単一車線のプロパイロットから複数車線のプロパイロット2.0へと段階的に技術進化を図ってきた」と説明し、次世代プロパイロットではより複雑な一般道を含む走行での信頼できる運転支援を目指すと述べている。2025年12月10日には日産とWayve社が協業契約を締結し、2027年度中に国内向けの一部量産モデルへの搭載を予定していることも明らかになった。高速道路の単一車線から始まった技術は、10年足らずで一般道でのハンズオフを見据えるところまで来ている。

新型エクストレイル e-POWER世界初公開 全面刷新で何が変わったか
プロパイロット2.0を初めて積んだのは、日産で最も長い歴史を持つ車種のスカイラインだった。1957年に生まれ62年を数えていたこのセダンに、日産は「世界初」を冠する運転支援技術を託した。歴代スカイラインが常にその時代の最先端技術を採用してきた系譜を、プロパイロット2.0がそのまま受け継いだ形になる。
プロパイロットとプロパイロット2.0はどう違うのか
プロパイロットは高速道路の単一車線内で車間距離と車線中央の維持を支援する技術で、2016年にセレナへ初搭載された。プロパイロット2.0はこれに加えてナビゲーションと連動したルート走行と、同一車線内でのハンズオフを世界で初めて同時に実現した技術で、2019年にスカイラインへ搭載された。
プロパイロットは自動運転なのか
プロパイロットおよびプロパイロット2.0は自動運転のレベル2に位置づけられる運転支援技術だ。ドライバーは常に運転席に座り、道路状況や交通、車両の状態を監視して、必要なときはいつでも手動操作に切り替えられる状態を保つ責任がある。
三菱のMI-PILOTとプロパイロットの関係は何か
三菱のeKワゴン・eKクロスに搭載された「MI-PILOT」は、日産と三菱自動車の合弁会社NMKVによる開発体制のもとで生まれた運転支援システムで、日産のプロパイロットと技術的な基盤を共有している。2019年3月28日、日産デイズと同日に発表・発売された。




