ROADECT
スマホなしでGoogleが動くカーナビ Google Built-inとは何か
テクノロジー3,520字

スマホなしでGoogleが動くカーナビ Google Built-inとは何か

ホンダ、日産、マツダ、三菱が次々と採用するGoogle Built-inは、スマートフォン不要でGoogleのOS・地図・アシスタントが使えるカーナビの新標準だ。Android Autoとは仕組みから根本的に異なり、OTAで地図が常時更新される。日本市場で購入できる搭載車種、主要3機能の詳細、プライバシーへの対応まで整理する。

最近、新型車のカーナビを見ると、見慣れた画面に出会うことが増えた。あのGoogleマップの画面、あのアシスタントのマイク、あのPlay Storeのアイコンだ。「スマホをつないでいるわけでもないのに、なぜGoogleが動いているのか」と不思議に思った読者もいるかもしれない。

カーナビにGoogleが入るようになった。ただしそれは、多くの人が想像するAndroid AutoでもCarPlayでもない。ホンダ、日産、マツダ、三菱といった国産メーカーが次々と採用しはじめた「Google Built-in」は、クルマのシステムそのものにGoogleのOSを組み込む、従来とは根本的に異なるアプローチだ。

どう違うのか。日本でどのクルマに搭載されているのか。順を追って整理する。

出典: Google

Google Built-inとAndroid Autoは何が違うのか

Googleが車載向けに提供するシステムには、大きく分けて2種類がある。「Android Auto」と「Google Built-in」だ。名前は似ているが、仕組みは根本的に異なる。

Android AutoはスマートフォンをUSBケーブルまたはワイヤレスでクルマに繋ぎ、スマホの画面をカーナビのディスプレイに映し出すシステムだ。動いているのはあくまでスマホ側のアプリであり、クルマのシステムは表示窓にすぎない。利用中はスマホのバッテリーが消耗し、車内への持ち込みが前提となる。接続を切ればカーナビには何も残らない。

一方のGoogle Built-inは、正式名称を「Cars with Google built-in」という。Android Automotive OSと呼ばれるOSをクルマのシステムに直接組み込む方式で、スマートフォンは一切不要だ。電源を入れれば即座にGoogle Maps、Googleアシスタント、Google Play Storeが使える状態になっており、スマホを手元に持たなくてもクルマが動く。

最も実感しやすい差は地図の更新方法にある。Android Autoはスマホが持つ地図データをそのまま使うが、Google Built-inはOTA(無線通信によるソフトウェア更新)でGoogle Mapsを常時更新する。純正ナビの地図データが数年で陳腐化する問題とは無縁であり、開通したばかりの道路も自動的に反映される。

「スマホを忘れてもカーナビが動く」「地図更新のために販売店に持ち込まなくてよい」という体験は、使い始めると手放しにくい。

日本で買えるGoogle Built-in搭載車種(2026年版)

2026年6月現在、日本市場でGoogle Built-inを搭載するクルマは複数のブランドにまたがっている。Googleが公式パートナーとして挙げるブランドの中から、日本で実際に購入できる車種を整理する。

電動車から広がった世界初搭載と北欧勢

Google Built-inの起点はPolestar 2だ。スウェーデンの電動車ブランドPolestarが2020年に世界で初めてシステムを搭載したEVであり、現在は後継のPolestar 3も日本で販売されている。

同じスウェーデンのVolvoはPolestarの姉妹ブランドにあたり、旗艦EV「EX90」、EX40(旧XC40 Recharge)、C40 Rechargeの3モデルにGoogle Built-inを搭載している。Volvoは2025年末から2026年にかけてOTAアップデートによって既存の約250万台にも新しいシステム機能を配信しており、「買ってからも進化するクルマ」を実践している。

国産初はホンダ アコード

日本での転換点となったのが2024年3月8日発売のホンダ アコード(11代目)だ。国産ブランドとしてはじめてGoogle Built-inを搭載したモデルで、12.3インチのHonda CONNECTディスプレイに統合されている。2026年3月の一部改良ではZR-V(e:HEV Zグレード)にも採用範囲が広がった。

ホンダ公式のGoogle Built-in搭載インフォテインメントシステム。Honda CONNECTディスプレイにGoogle Mapsが表示された車内の様子
出典: Honda

日産は5車種に一気に展開

日産はルノー・日産・三菱のアライアンス全体として2018年にGoogleとの提携を発表しており、近年は急速に搭載車種を増やしている。「Google搭載NissanConnect」という名称のもと、EV充電スタンドの絞り込みや充電ルートとの連動など、電動車ならではの機能も含む形で展開している。

2025年8月発表・9月発売のエクストレイル一部改良、2025年10月発表の新型リーフ(B7型)、2026年2月発売のアリア一部改良とセレナ一部改良、そして2026年6月18日発売の新型キックスと、1年足らずで5車種が搭載対象になった。

日産アリア(2026年2月発売一部改良)の車内インフォテインメントシステム画面。Google搭載NissanConnectのディスプレイ
出典: 日産自動車
関連記事
新型日産キックス発売 第3世代e-POWERと電動4WD「e-4ORCE」を初搭載
ニュース

新型日産キックス発売 第3世代e-POWERと電動4WD「e-4ORCE」を初搭載

マツダ初搭載はCX-5の全面改良で

マツダがはじめてGoogle Built-inを搭載したのは、2026年5月21日に発売したCX-5の全面改良モデルだ。最上級の「L」グレードには15.6インチ、その他グレードには12.9インチのディスプレイを採用している。価格は330万〜447万円。

関連記事
新型MAZDA CX-5 発売 約10年ぶり全面刷新の進化点と価格
ニュース

新型MAZDA CX-5 発売 約10年ぶり全面刷新の進化点と価格

三菱デリカミニは10年間通信無料

三菱は2025年秋に発売した新型デリカミニ(全面改良)にシステムを搭載した。12.3インチのナビと7インチのメータークラスターを一体型ディスプレイで構成しており、上位グレードへの標準装備と他グレードへのオプション設定を組み合わせている。

特徴的なのは通信料の扱いだ。クルマを登録してから10年間は通信費が無料で、11年目から有料に切り替わる。Apple CarPlayやAndroid Autoも引き続き使えるため、同乗者のスマホのOSに合わせて接続方法を選べる柔軟さがある。

スマホを繋がなくても使える、その中身

Google Built-inのコア機能は3つある。

Google Maps:地図は常にOTAで更新される

カーナビと完全に統合されており、渋滞情報をリアルタイムで反映しながらルートを提案する。純正ナビの地図データが数年で古くなる問題とは無縁で、開通したばかりの道路も自動的に反映される。OTAで地図が自動更新されるため、販売店に持ち込んで更新作業をする必要がない。

オフラインマップのダウンロードにも対応しており、通信が不安定な山間部でも基本的なルート案内は継続できる。

出典: Google

Googleアシスタント:声だけで操作できる

ウェイクワード「OK Google」で起動し、目的地の設定、電話の発信、音楽の再生などを走行中も声だけで操作できる。ハンドルから手を離す必要がないため、安全面でも合理的な選択だ。

2026年4月30日、GoogleはGeminiを車載Google Built-in環境に展開すると発表し、GMの2022年型以降のキャデラック・シボレー・ビューイック・GMCを中心とする約400万台を対象に、ロールアウトを開始した。GeminiはGoogleが開発する次世代AIで、より自然な会話や複雑な指示の理解を得意とする。2026年6月時点では米国英語のみの対応で、日本語対応の時期は未定だ。

出典: Google

Google Play Store:カーナビ以外のアプリも使える

対応アプリのインストールを可能にする機能で、SpotifyやYouTube Music、Netflixなどをクルマのディスプレイで利用できる。ただし、すべてのAndroidアプリが使えるわけではなく、Android Automotive OS向けに最適化されたアプリのみが対象だ。

カーナビタイムは2023年10月に日本初のAndroid Automotive OS対応ナビアプリとして提供を開始しており、対応アプリの選択肢は少しずつ広がっている。純正ナビの代替として使うだけでなく、クルマ専用のエンターテインメント環境として育てられるプラットフォームでもある。

出典: Google

気になるプライバシーとアカウント依存の問題

Google Built-inはGoogleのサービスと深く統合されるため、データの扱いを気にする向きは多い。

Googleがクルマから収集する主なデータは、位置情報と診断・使用状況データの2種類だ。位置情報はアプリごとまたは一括でオン/オフを設定でき、診断データも設定でオフにできる。「OK Google」のウェイクワードも設定から無効にできる。

Googleアカウントがなくても基本機能は利用できるが、Google Mapsの目的地履歴や音楽サービスとの同期にはアカウントが必要だ。既存のGoogleアカウントをそのまま使えるため、クルマ専用に新規作成する必要はない。

ホンダ公式FAQでは、クルマを売却・譲渡する前に個人データを消去するため初期化を推奨している。スマートフォンと同様の手順だ。日常的にAndroidスマートフォンやGoogleのサービスを使っていれば、車載システムが追加するデータの範囲はそれほど大きくはないともいえる。「スマートフォンに代わる、もう一台のGoogleデバイスがクルマになる」という認識が実態に近い。

日本市場でGoogle Built-inはいつ広がるか

ルノー・日産・三菱のアライアンスはGoogleと組織的に提携しており、新型・改良モデルへの搭載が加速する構造にある。マツダがCX-5で踏み切ったことは、日系メーカーの間でも採用判断を後押しする可能性がある。「独自ナビを開発するよりも、継続的なOTAアップデートを通じてユーザーへの提供価値が増す」という判断が、業界全体に広がりつつあるからだ。

一方でトヨタの「Arene(アリーン)」という名前を耳にした読者もいるかもしれない。ただしAreneはインフォテインメントではなく、走る・止まる・曲がるを制御するSDV(ソフトウェア定義車両)向けのプラットフォームだ。ソフトウェアで車両機能を定義する次世代アーキテクチャで、Google Built-inの直接競合ではなく、担う役割の層が根本的に異なる。

OTAで既存車を更新できるという特性は、Google Built-inが持つ最大の強みでもある。買い替えなくても、クルマがアップデートで進化していく時代が、すでに始まっている。

Google Built-inのベースとなるAndroid Automotive OSと、スマホ向けのAndroid(Android Auto含む)は、名前は似ているが別々に開発・管理されているOSだ。車載向けのAndroid Automotive OSは常時電源オンを前提とし、エアコンや計器類との連携など自動車固有の要件に対応している。スマホアプリをそのまま移植できるわけではなく、各メーカーがクルマ側のシステムとの統合をゼロから作り込む必要がある。採用ブランドが増えてきたとはいえ、まだ数年分の開発ノウハウが積み上がったばかりの技術だ。

Google Built-inとAndroid Autoの違いは何か

Android AutoはスマートフォンをUSBやワイヤレスで繋ぎ、スマホのアプリをクルマのディスプレイに映し出すシステムだ。Google Built-inはスマホが不要で、クルマ本体にOSが直接搭載されている。地図はOTAで常時更新され、スマホを車内に持ち込まなくても全機能が使える点が根本的な違いだ。

Google Built-inはどのような機能が使えるか

コア機能は3つだ。Google Mapsによるナビゲーション(地図はOTAで常時更新)、Googleアシスタントによるハンズフリー音声操作、Google Play Storeによる車載アプリのインストールだ。SpotifyやYouTube Music、Netflixなど、Android Automotive OS向けに最適化されたアプリをクルマのディスプレイで使えるようになる。スマートフォンを接続しなくてもすべて利用できる。

Googleアカウントがなくても使えるか

基本機能はGoogleアカウントなしでも利用できる。ただしGoogle Mapsの目的地履歴やお気に入り登録、音楽サービスとの同期にはアカウントが必要だ。すでにAndroidスマートフォンを使っている場合は、同じアカウントをそのまま使えるため新規作成は不要だ。