BMWのハンズオフ運転解説 導入から130km/h対応まで
BMWは2019年、国内メーカーとして初めて高速道路渋滞時のハンズオフを導入した。7年をかけて車種を広げ、2026年7月には新型iX3で時速130km/hの高速道路ハンズオフが発表された。ただし実際の利用開始は2026年11月以降だ。国内メーカーとの比較を交え全体像を解説する。
渋滞にはまった高速道路で、ハンドルから手を離す。この体験をBMWが日本に持ち込んだのは、2019年のことだった。国内メーカーに先駆けて実現したハンズオフ運転支援は、7年をかけて対象車種を広げ、2026年7月には渋滞時のみという制約を超えるハンズオフの搭載を発表した。高速巡航中のハンズオフへと踏み出した、その歩みを追う。
2019年、国内メーカーに先駆けたハンズオフ導入
BMWジャパンは2019年4月10日、ハンズオフ機能付き渋滞運転支援システムを国内モデルとして初めて日本に導入すると発表した。対象となったのは3シリーズ、8シリーズ クーペ、8シリーズ カブリオレ、X5で、2019年夏以降に順次導入されている。
発表の時点で対象モデルの拡大が予定されていたことも興味深い。ハンズオフは一部の限定車種だけの特別装備ではなく、BMWのレンジ全体に広げていく前提の技術として日本に投入されたことになる。
渋滞時ハンズオフの仕組み 3眼カメラと前方注視の条件
BMWの渋滞時ハンズオフが作動するのは、高速自動車国道または指定都市高速道路を走行中に渋滞へ巻き込まれ、時速60km/h以下まで速度が落ちた場面に限られる。ドライバーが一定の条件下でシステムを起動させると、ステアリング、アクセル、そして衝突被害軽減ブレーキの操作をクルマが自動的に引き受け、先行車との車間距離を保ったまま追従走行を続ける。
自動運転レベルとしては、SAEインターナショナルが定めるレベル2に位置づけられる運転支援であり、自動運転そのものではない。ドライバーは常に前方へ注意を払い、周囲の交通状況に応じてただちにハンドル操作へ戻れる状態を保つ必要がある。技術面では3眼カメラを中心とした「ドライビング・アシスト・プロフェッショナル」パッケージが土台となっており、この構成は2022年に発表されたBMW i4にも標準装備として引き継がれている。
3シリーズから5シリーズへ広がったハンズオフ標準搭載
2019年の発表通り、BMWの渋滞時ハンズオフはその後も対象車種を広げてきた。5シリーズ ロングにも標準装備として組み込まれ、「ドライビング・アシスト・プロフェッショナル」の一部として「高速道路渋滞時ハンズ・オフ・アシスト」が全モデルに用意されている。エンジン車のガソリンモデルだけでなく、電気自動車のi5ロングにも同じパッケージが用意されている点も見逃せない。
価格帯を横断して同じ運転支援思想を展開してきたことは、BMWがこの技術を一部の上級グレードに留めず、ブランド全体の標準的な安全性能として位置づけてきたことの表れといえる。
新型iX3が発表した時速130km/hのハンズオフ
2026年7月22日、BMWジャパンは新型BMW iX3を発売した。BMWの新世代EV戦略「ノイエ・クラッセ」の第一弾モデルとなるこのSUVには、標準装備として「ハイウェイ・アシスト」が搭載される。価格はiX3 50 xDriveが982万円、M Sportが1,034万円だ。
ハイウェイ・アシストは、高速自動車国道や指定都市高速道路において、渋滞時に限定されることなく時速130km/hまでのハンズオフ走行を可能にする機能だ。運転操作の責任がドライバーに残るレベル2という位置づけは従来と変わらないが、対象となる場面が渋滞から高速巡航全般へと広がる点は質的な転換にあたる。
ただし、この機能は発売直後から使えるわけではない。新型iX3の発売時点の標準装備は「ステアリング&レーン・コントロール・アシスト」にとどまり、これは手をステアリング・ホイールから完全に離すと警告音が鳴り、一定時間後に機能が停止するハンズオン仕様だ。ハイウェイ・アシストの利用開始は2026年11月以降が予定されており、車両のソフトウェアアップデートを経て段階的に有効化される見込みとなっている。新車購入から3年間は無償で利用でき、それ以降は有償のサブスクリプションへの申し込みが必要になる。
2019年に渋滞時ハンズオフを国内メーカー初で導入してから7年。BMWのハンズオフは、ようやく高速巡航域という次の段階に足を踏み入れた。もっとも、この発表で対象とされたのは新型iX3のみで、5シリーズや7シリーズといった既存車種への展開には触れられていない。
国産勢の先行に対しBMWが選んだ二段階の戦略
高速道路でのハンズオフという視点で振り返ると、国産メーカーの動きは早かった。
関連記事
日産 プロパイロットの進化史 誕生からハンズオフ走行まで全解説
日産は2019年、スカイラインに搭載した「プロパイロット2.0」で、ナビゲーションと連動したルート走行と同一車線内でのハンズオフを世界で初めて同時に実現している。高速道路を巡航しながらのハンズオフという体験そのものは、この時点ですでに国内に存在しており、BMWが新型iX3でこれに続いたのは2026年のことだった。
関連記事
アイサイト 歴代バージョン完全解説 ver.1から3眼カメラまで
一方、対象車種の広さという観点では状況が異なる。スバルも2020年、「アイサイトX」で渋滞時0〜50km/hのハンズオフアシストを投入したが、BMWが2019年に持ち込んだ渋滞時ハンズオフは、その後5シリーズをはじめとする幅広いレンジへ標準装備として広がっていった。
関連記事
自動運転レベル0〜5とは 境界線とホンダ・メルセデスの実例で解説
なお、レベル2のハンズオフがどれだけ幅広い速度域をカバーしても、それは運転操作の責任がシステムに移るレベル3とは別のカテゴリーにとどまる。BMWを含め、国内でこの一線を越えた市販車はまだ限られている。
関連記事
BMW ノイエ・クラッセとは 1962年の原点と次世代EV iX3の全体像
BMWが130km/hハンズオフの第一弾に量産EVの新型iX3を選んだことは、ノイエ・クラッセという次世代プラットフォームの立ち上げと運転支援の進化を同時に見せる戦略とも読める。2019年の渋滞時ハンズオフが量販車種への横展開の広さを武器にしたのに対し、2026年の高速道路ハンズオフは次世代フラッグシップへの先行搭載という、これまでとは異なる展開パターンを選んでいる。
日本国内でレベル3の自動運行装置として型式指定を取得した市販車は、2020年11月11日に国土交通省の指定を受けたホンダ・レジェンドが唯一だ。BMWが渋滞時ハンズオフを国内メーカー初で導入した2019年4月の翌年には、ホンダが運転操作の責任をシステム側に移す、さらに一段上の壁を越えていたことになる。
BMWのハンズオフはいつから日本で使えるのか
渋滞時のハンズオフは2019年から利用できる。高速道路の渋滞に巻き込まれ、時速60km/h以下まで速度が落ちた場面が対象だ。高速巡航中のハンズオフは2026年7月に新型iX3で発表されたが、実際に機能が有効になるのは2026年11月以降の予定となっている。
新型iX3のハンズオフとハンズオンはどう違うのか
ハンズオフはステアリングから完全に手を離して走行できる状態を指す。ハンズオンは、手をステアリング・ホイールに添えている必要がある状態で、完全に手を離すと警告音が鳴り機能が停止する。新型iX3は発売時点で、このハンズオン仕様の運転支援が標準装備となっている。
BMWの高速道路ハンズオフはどの車種で使えるのか
時速130km/hのハイウェイ・アシストの対象として発表されたのは新型iX3のみだ。5シリーズなど既存の車種は、引き続き渋滞時60km/h以下のハンズオフが標準装備となっている。
この記事について
- 執筆
- ROADECT編集部
- 公開



