自動車の「セグメント」とは何か、A/B/C分類でわかる車格の基準
自動車の「セグメント」という言葉には、実は世界共通の公式基準がない。欧州自動車工業会(ACEA)の6区分とJATO Dynamicsの19〜20クラス分類を手がかりに、A/B/C分類の目安と、日本の車両区分との違いを整理する。
海外の自動車レビューや輸入車のカタログで、「Cセグメント」「BセグメントSUV」という言葉を目にしたことがあるかもしれない。日本のディーラーではまず耳にしない呼び方だが、欧州発のこの区分を知ると、自分の愛車が世界のクルマ地図のどこに位置しているのかが見えてくる。境界線は思いのほか曖昧で、その曖昧さ自体に自動車業界の実情が透けて見える。
セグメントとは何か、車格を分ける物差し
自動車のセグメントとは、車両のサイズや用途、価格帯をもとに車格を分類する考え方だ。多数のメーカーがひしめく欧州の自動車市場で、どのモデルとどのモデルが同じ土俵で競合するのかを把握するため、市場調査やマーケティングの現場で使われてきた。
ただし、世界共通の公式な基準が定められているわけではない。欧州自動車工業会(ACEA)は乗用車をA+B・C・D・E+Fという4段階に加え、SUVとMPVを合わせた6区分で集計している一方、自動車市場調査会社のJATO Dynamicsは同じ欧州市場を19〜20クラスというはるかに細かい区分で管理している。同じ「セグメント」という言葉を使っていても、集計する主体によって粒度がまったく異なる。
A〜Fで見る目安と代表的な車種
実務でよく使われるのが、Aを最小として、B、C、D、E、Fとアルファベットが進むほど車格が大きく高級になっていくという目安だ。Aセグメントはフィアット・パンダのような都市型の小型車、Bセグメントはフォルクスワーゲン・ポロのようなコンパクトカーが代表格とされる。
Cセグメントにはトヨタ・カローラやフォルクスワーゲン・ゴルフのような、世界中で定番となっているハッチバックやセダンが並ぶ。全長4,460mmのMAZDA3ファストバックも、数字だけを見ればごく一般的なCセグメントの寸法に収まる一台だ。
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Dセグメント以上になると、日産スカイラインやBMW3シリーズのようなミドルサイズの高性能セダン、さらにメルセデス・ベンツEクラスのような大型セダンへとつながっていく。もっとも上のFセグメントには、メルセデス・ベンツSクラスのような各メーカーのフラッグシップセダンが位置づけられる。
ここで注意したいのは、全長何メートルまでがAで、何メートルからがBといった明確な数値基準が存在しない点だ。目安となる全長の範囲は調査会社ごとに開きがあり、同じ車種でも情報源によって隣り合うセグメントのどちらに数えられるかが揺れることがある。
ボディタイプとは別の軸、SUVの立ち位置
セグメントを理解するうえでもう一つ大切なのが、車両のサイズや価格帯で分けるセグメントと、セダンやハッチバック、SUV、ミニバンといった形状で分けるボディタイプは、まったく別の軸だという点だ。同じCセグメントの中にハッチバックのゴルフもあれば、CセグメントのSUVも存在する。
1つの車名が複数のボディタイプに枝分かれする例は、日本のクルマにも見つかる。トヨタ・クラウンは2022年以降、クロスオーバー・スポーツ・セダン・エステートという性格の異なる4つのボディタイプを持つブランドへと姿を変えた。

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セグメントとボディタイプが交差する現実をもっとも象徴しているのが、SUVという存在だ。欧州自動車工業会は、EUの新車販売をAとBを合わせたSmall、CのLower medium、DのUpper medium、EとFを合わせたLuxury、そしてSUV・MPVという6区分で集計している。2023年の内訳を見ると、Small21%、Lower medium15%、Upper medium6%、Luxury2%、MPV4%に対し、SUVは単独で51%を占め、EUの新車の過半数がSUVという結果になった。
かつてはAセグメントからEセグメントまで、ほぼすべてのサイズ帯にSUV版が用意されるようになった結果、セダンやハッチバックの販売比率をSUVが上回る逆転が起きている。この数字は、セグメントという物差しだけでは今のクルマ市場を語りきれないことも示している。
日本で根付かない理由、車両区分との違い
輸入車の記事で頻繁に見かける「セグメント」だが、日本国内の一般ユーザーやディーラーの現場でこの言葉が使われる場面は少ない。カタログや値引き交渉の場で「このクルマはBセグメントだから」という会話にはまずならない。理由は、日本にはすでに別のものさしが存在するからだ。
道路運送車両法に基づき、日本の乗用車は総排気量2,000cc以下で長さ4.7m・幅1.7m・高さ2.0m以下という基準をすべて満たす「小型自動車」、いわゆる5ナンバー車と、そのいずれかを超える「普通自動車」、いわゆる3ナンバー車に分かれる。さらに長さ3.4m・幅1.48m・高さ2.0m以下で排気量660cc以下に収まるクルマは軽自動車として区分される。
軽自動車という区分そのものは1949年に設けられ、以来何度か規格が拡大されてきた。この区分は市場調査のための任意の分類ではなく、税制や登録に直結する法律上の区分だ。欧州のセグメントが同じ土俵で競合するモデルを把握するための道具であるのに対し、日本の車両区分は税金と登録手続きを定めるための道具であり、そもそも目的が異なっている。
境界の曖昧さ、JATOに見る現場の実情
セグメントの境界がなぜここまで曖昧になるのか、その実情がよく分かるのがJATO Dynamicsの分類作業だ。JATOは、都市型の小型車を表すEU Aから、小型車のEU B、下級・上級のロワーミドルにあたるEU C1・EU C2、下級・上級のアッパーミドルにあたるEU D1・EU D2、大型・高級のEU E1・EU E2、さらに大型・中型・小型のMPVという具合に、乗用車を19〜20クラスへ細かく分けている。しかも同じA〜Eの区分の中にそれぞれSUV版が用意されており、ACEAの6区分とは比べ物にならない粒度だ。
この振り分けは、全長や価格といった物理的な数値だけで機械的に決まるわけではない。新型車が登録されるたびに担当の調査員が個別に判断する作業であり、メーカー自身が、自社モデルをどのセグメントに位置づけてほしいかという意向を示すことがあり、その意向が物理的な特性についての検討より優先されることさえあるという。同じ車格のクルマでも、メーカーの狙うイメージ次第でセグメントの見え方が変わりうるということだ。
セグメントという言葉は、車格を測る便利な物差しであると同時に、その境界線自体が市場と作り手の意図によって絶えず引き直されている区分でもある。全長何センチ、価格何円という数字だけでは説明しきれない駆け引きが、ラベルの裏側には潜んでいる。
カタログのスペック欄には表れないこの曖昧さを知っておくと、輸入車の記事や海外のニュースに出てくる「Cセグメント」「Dセグメント」という言葉の見え方も、少し変わってくるはずだ。自分の愛車が世界のどのあたりに位置づけられているのかを知ることは、そのクルマをもう一段解像度高く見つめ直すきっかけになる。
軽自動車という区分が生まれたのは1949年に遡る。当時の規格は全長2.8m以下、全幅1.0m以下、排気量150cc以下というものだった。現行規格の排気量660cc以下と比べると、当初はその4分の1にも満たない小ささだった。
セグメントに世界共通の基準はあるのか
存在しない。欧州自動車工業会はA+B・C・D・E+Fの4段階にSUV・MPVを加えた6区分で集計する一方、JATO Dynamicsのような調査会社は19〜20クラスというより細かい区分を使っており、集計する主体によって粒度が異なる。
SUVは何セグメントに分類されるのか
SUVという呼び方はボディタイプの区分であり、サイズや価格帯を表すセグメントとは別の軸にある。AセグメントのSUVからEセグメントのSUVまで、複数のセグメントにまたがってSUVが存在する。
日本車にもセグメントの区分は当てはまるのか
海外の調査会社は日本車にもセグメントを割り当てている。ただし日本国内では道路運送車両法に基づく普通自動車・小型自動車・軽自動車という車両区分が実務上使われており、「セグメント」という呼び方自体はあまり浸透していない。
この記事について
- 執筆
- ROADECT編集部
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