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スズキHEARTECTとは 2014年アルトから電動化までの軌跡
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スズキHEARTECTとは 2014年アルトから電動化までの軌跡

スズキの軽自動車・コンパクトカーの大半を支える「HEARTECT」プラットフォームは、2014年のアルトに無名のまま初採用され、2016年のスイフトでようやく名前を得た。設計思想の中身と、電動化に対応した派生型「HEARTECT-e」までの展開を追う。

「HEARTECT(ハーテクト)」は、スズキが2014年から採用してきた自動車プラットフォームの名称だ。軽自動車のアルトから始まり、今ではワゴンRやスイフト、ソリオなど、スズキの主力モデルの大半をこの骨格が支えている。目立たない「土台」の技術が、なぜここまで幅広い車種に広がったのか、その仕組みと歴史をたどる。

スイフトの車体骨格図。超高張力鋼板(青)と高張力鋼板(緑)の採用箇所を色分けして示す図
出典: スズキ株式会社

HEARTECTとは何か

HEARTECTは、骨格や主要部品を全面刷新し、高い剛性と軽量化の両立を目指したスズキのプラットフォームだ。最初に採用されたのは、2014年12月22日に発売された8代目「アルト」である。ただしこの時点では、まだ「HEARTECT」という名前は付いていなかった。当時は単に「新たに開発したプラットフォーム」と呼ばれていただけだった。

名前が正式に使われるようになったのは、その2年後だ。2016年12月27日に発表された新型「スイフト」で、「軽量化と高剛性を両立した新プラットフォーム『HEARTECT(ハーテクト)』」という表現が初めて登場した。1台のクルマのための専用技術ではなく、複数車種にまたがる骨格として育てられてきたことが、この命名の遅れからも見えてくる。

軽さと剛性を両立させる骨格構造

HEARTECTは、骨格の曲がり角や継ぎ目をできるだけなくして最短距離で滑らかにつなぐ形状にし、サスペンションの部品そのものを骨格の一部として使うことで構造と機能を一体化させ、さらに骨格同士がしっかり結合する部分を部品の固定にも利用することで、補強のためだけに存在する部品を減らしている。

HEARTECTプラットフォームの骨格構造図。車体全体のシャシーと、骨格の継ぎ目をなくして滑らかにつないだ構造を示す拡大図
出典: スズキ株式会社

こうした工夫によって、少ない部品点数でも十分なボディー剛性を確保できるようになった。効果は数字にも表れている。8代目アルトでは、新型アルトのCVT車が先代の「アルト エコ」と比べて60kg軽くなり、ボディー重量の46%に高張力鋼板を使うことで軽さと剛性を両立させた。

2015年に登場したソリオでは、新型のHYBRID MX 2WD車が先代のX-DJE 2WD車と比べて100kg軽量化され、高張力鋼板の比率もボディー重量の約51%まで高まっている。2016年に「HEARTECT」の名を得たスイフトでは、XG 2WD 5MT車で先代の同グレードと比べて120kgの軽量化を達成した。

なお、スズキには「テクト」という別の技術名も存在する。衝突の衝撃を吸収する車体構造を指す技術で、HEARTECTが目指す骨格・プラットフォームそのものの刷新とは役割が異なる。実際、8代目アルトには、新プラットフォームとは別に「衝突時の衝撃を効率よく吸収・分散する軽量衝撃吸収ボディー[TECT]」も搭載されていた。名前は似ているが、指し示す範囲が異なる別の技術だ。

軽自動車から広がった採用の歴史

HEARTECTは、いきなり主力車種に投入されたわけではない。まず軽自動車のアルトに採用され、そこから量産効果の高いモデルへと段階的に広がっていった。

2015年8月26日に発売された「ソリオ」は、このプラットフォームを小型乗用車として初めて採用した車種だ。当時のスズキは「今後、この新開発プラットフォームを国内及び海外のAセグメント車に展開する」と表明しており、1台のための技術ではなく、車種群全体を支える構想をすでに示していた。

2016年2月にはイグニスが、同年12月には新型スイフトが相次いでこのプラットフォームを採用し、スイフトの発表時についに「HEARTECT」という名前が与えられた。2017年2月1日に発売された新型ワゴンRは、HEARTECTの採用によって軽ワゴンとして当時最も優れた低燃費33.4km/Lを達成した。同年末には、スペーシアと小型SUVのクロスビーもこのプラットフォームを採用し、ボディー形状の異なる車種への展開がさらに進んだ。2019年12月に発表され2020年1月に発売された新型ハスラーでは、環状の骨格構造が新たに取り入れられ、ボディー全体の剛性がさらに高められている。

スズキ公式サイトが「HEARTECT搭載車」として案内する国内向けの現行モデルには、ワゴンR、スペーシア、ハスラー、ラパン、アルト、クロスビー、スイフト、ソリオ、フロンクスが並ぶ。軽自動車から小型SUVまで、車格も用途も異なる車種が同じ骨格を共有している。

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BEV版プラットフォーム「HEARTECT-e」

HEARTECTは、電動化の波にも対応している。2024年11月、スズキは欧州で初のバッテリーEV「e VITARA」を公開し、このモデル専用に新規開発したプラットフォーム「HEARTECT-e」を発表した。

HEARTECT-eには、内燃機関を前提にしたHEARTECTとは異なる工夫が加えられている。メインフロアの下にあった補強部材を廃止し、その分のスペースを電池の搭載に充てることで、電池容量を最大化した。高張力鋼板の使用率も従来のプラットフォームより高め、車体の軽量化を図っている。

日本向けの「eビターラ」は、2025年9月16日に発表され、2026年1月16日から発売されている。価格は399.3万円からで、一充電走行距離はWLTCモードで433〜520kmだ。軽自動車から量産EVまで、スズキが培ってきた「軽さと剛性の両立」という発想は、動力源が変わっても引き継がれている。

出典: スズキ株式会社【四輪公式チャンネル】

なぜ軽自動車から生まれたのか

HEARTECTが軽自動車のアルトから生まれ、真っ先にAセグメント車へと広がっていったことには理由がある。軽自動車は車両価格に占める利益率が薄く、1台あたりのコストをわずかでも切り詰める工夫が求められる。同時に、衝突安全性能への要求は年々高まっており、軽さとコストと安全性を同時に満たす骨格が必要とされていた。

部品点数そのものを減らすという発想は、コストと重量を同時に下げながら剛性は落とさないという難題への答えだった。アルトやワゴンRのオーナーが日々乗っている軽自動車には、スイフトやeビターラと同じ設計思想が息づいている。値段の張らないクルマほど手を抜かれる、という発想とは真逆の姿勢が、この骨格には表れている。

2015年にソリオがこのプラットフォームを初めて小型乗用車に採用した時点では、まだ「HEARTECT」という名前は存在していなかった。それでもスズキは当時から「今後、国内及び海外のAセグメント車に展開する」と明言していた。名前が付く前から、1台限りではなく車種群全体を支える骨格として設計されていたことがうかがえる。

HEARTECT搭載車種にはどんなものがあるか

スズキ公式サイトが「HEARTECT搭載車」として案内する国内向けの現行モデルには、ワゴンR、スペーシア、ハスラー、ラパン、アルト、クロスビー、スイフト、ソリオ、フロンクスがある。軽自動車から小型SUVまで、幅広い車格をカバーしている。

HEARTECTとテクトはどう違うのか

テクトは衝突の衝撃を吸収する車体構造を指す技術で、HEARTECTが目指す骨格・プラットフォームそのものの刷新とは役割が異なる。名前は似ているが、指し示す範囲が異なる別の技術だ。

電気自動車にもHEARTECTは使われているか

BEV専用に新規開発された派生型「HEARTECT-e」が、2024年に発表された「e VITARA」に初めて採用された。メインフロア下の補強部材を廃止して電池容量を最大化するなど、電動車に合わせた工夫が加えられている。

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執筆
ROADECT編集部
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