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ディーゼルエンジンの仕組みと強み ガソリン車との違いを解説
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ディーゼルエンジンの仕組みと強み ガソリン車との違いを解説

ガソリンエンジンとディーゼルエンジンは、同じ「エンジン」でも燃焼の起こし方がまったく違う。圧縮着火という仕組みが生む燃費とトルクの強みと、クリーンディーゼル技術がたどってきた現在地を、2012年から一貫してディーゼルと向き合ってきたマツダの事例とともに解説する。

信号待ちから走り出すときに聞こえる、低く粘るようなディーゼル特有の音。ガソリンエンジンには出せないこの音の違いは、同じ「エンジン」という言葉でくくられていても、両者がまったく違う原理で動いていることを物語っている。その違いがどこから生まれ、どんな強みにつながっているのかを、燃焼の仕組みから解き明かす。

ガソリンとディーゼルエンジンの燃焼方式の違い

クルマの心臓部であるエンジンは、燃料を燃やして生まれる圧力でピストンを動かし、その力を回転運動に変えて走る仕組みだ。ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの決定的な違いは、この燃焼を起こす方法にある。

ガソリンエンジンは、空気とガソリンを混ぜた混合気をシリンダー内に取り込み、点火プラグの火花で燃焼させる。この方式は火花点火と呼ばれる。ガソリンは気化しやすく、低い温度でも燃えやすい性質を持つため、確実に火をつけて燃やすという発想に向いている。

一方のディーゼルエンジンは、点火プラグを使わない。シリンダー内の空気だけを強く圧縮して高温にし、そこへ軽油を噴射することで自然に火がつく。この方式は圧縮着火と呼ばれ、空気を圧縮する力そのものが着火のスイッチになる。

この違いは圧縮比の設計にもそのまま表れる。ガソリンエンジンは圧縮比を上げすぎると、点火前に混合気が自然発火する異常燃焼が起きやすくなり、エンジンを傷める原因になる。そのため圧縮比は一定以下に抑える必要がある。ディーゼルエンジンは逆で、高い圧縮比であること自体が正常な燃焼の前提になっている。

マツダ・SKYACTIV-D(S5-DPTS)ディーゼルエンジン
出典: CEFICEFI(Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)

ディーゼルの強み 燃費とトルクが生まれる理由

ディーゼルエンジンの燃費の良さは、この圧縮着火という燃焼方式そのものに理由がある。

エンジンの効率を測る指標に熱効率がある。燃料が持つエネルギーのうち、どれだけを実際の動力に変換できるかを示す割合だ。ディーゼルエンジンはガソリンエンジンより熱効率が高く、同じ量の燃料でより長い距離を走れる。

要因は主に2つある。ひとつは圧縮比の高さで、圧縮比が高いほど燃焼後の膨張で取り出せるエネルギーが増える。もうひとつはポンピングロスの少なさだ。ガソリンエンジンはバルブで吸気量を絞って出力を調整するため、空気を吸い込む際の抵抗によるロスが生まれる。ディーゼルエンジンは常に空気を目一杯吸い込み、噴射する燃料の量だけで出力を調整するため、この抵抗が小さい。

両者を合わせて、ガソリンエンジンより2割前後燃費で優位に立つという試算がある。

もうひとつの強みが、低い回転域から発生する大きなトルクだ。軽油は圧縮された高温の空気の中で緩やかに燃え広がる性質を持ち、これが粘り強い出力特性につながる。信号待ちからの発進や坂道での加速、重い荷物を積んだときの走り出しで、この特性は体感しやすい。長距離を巡航するトラックや悪路を走るSUVにディーゼルエンジンが好まれてきたのは、こうした特性があってこそだ。

ガソリンエンジンにも譲れない持ち味がある

ただし、ディーゼルエンジンがあらゆる面で優れているわけではない。ガソリンエンジンは圧縮着火という制約がない分、エンジン本体を軽く作りやすく、高い回転数まで滑らかに回せる。アクセルを踏み込んだときの伸びやかな加速感は、ガソリンエンジンならではの持ち味だ。

構造がシンプルな分、振動や騒音も少なく、車両価格や整備コストを抑えやすいという実用面の利点もある。日常の使い方や求める走りの質によって、どちらが向いているかは変わってくる。

クリーンディーゼル技術と現在の立ち位置

かつてのディーゼル車には、黒煙や騒音、振動といった弱点がつきまとっていた。この状況を変えたのが、排出ガスを浄化する技術の進化だ。

代表例が、尿素水を使った排出ガス浄化システムだ。SCRと呼ばれるこの仕組みは、排気管の中に尿素水を噴射し、その分解で生まれる成分と窒素酸化物を触媒の中で反応させることで、無害な窒素と水に変える。ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる窒素酸化物は大気汚染の原因になるため、この浄化は欠かせない工程だ。使用する尿素水は「アドブルー」という商品名で流通しており、一般的な使用条件であれば年に1回程度の補充で足りる。

後処理技術に加えて、燃焼そのものを改良して汚染物質の発生量を抑えるアプローチも進んだ。結果として、現在のクリーンディーゼル車は、かつてのような黒煙や強い臭いとは無縁になっている。

それでも、ディーゼル車を取り巻く環境は楽観できない。2015年に発覚した独フォルクスワーゲンの排出ガス不正問題を境に、欧州ではディーゼル車への信頼が大きく揺らいだ。欧州自動車工業会(ACEA)の発表によると、2024年通年のディーゼル車のシェアは11.9%にとどまり、2021年の17.7%からさらに下がっている。かつて欧州の新車販売の半数近くを占めていた時代と比べると、様変わりした状況だ。年々厳しくなる排出ガス規制も、ディーゼル車の開発コストを押し上げる要因になっている。

日本国内では事情がやや異なる。SUVやミニバン、大型車を中心に、ディーゼルエンジンへの根強い支持が今も残っている。燃費の良さと力強いトルクを求める層にとって、ディーゼルは依然として有力な選択肢だ。

マツダとディーゼル SKYACTIV-Dという選択

日本の乗用車市場で「クリーンディーゼル」という言葉を一般ユーザーに広く定着させた立役者が、マツダだ。

マツダCX-5 XD 4WD 2.2 SKYACTIV-D(KE2AW)外観
出典: DY5W-sport(Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0)

2012年2月16日、マツダは新型「CX-5」を発売した。エンジン・トランスミッション・ボディ・シャシーにSKYACTIV技術を初めて全面採用し、デザインテーマ「魂動」を初めて採用したモデルでもある。このCX-5に搭載されたクリーンディーゼルエンジンが「SKYACTIV-D 2.2」だ。JC08モード燃費は2WD車で18.6km/L、4WD車で18.0km/Lを記録し、最大トルクは420N・mに達した。価格は2WD車で258万円からと、ディーゼルエンジン搭載車としては手が届きやすい水準に抑えられていた。

SKYACTIV-D 2.2が注目を集めた理由は、燃費や価格だけではない。当時のディーゼルエンジンとしては際立って低い、14.0という圧縮比を実現した点にある。一般にディーゼルエンジンは圧縮比を高くするほど自己着火しやすくなる一方、燃焼温度が上がりすぎて窒素酸化物や煤が増えやすいという課題を抱える。マツダは圧縮比をあえて低く抑える設計に踏み込むことで、高価な窒素酸化物除去触媒を使わずに、当時の排出ガス規制をクリアしてみせた。コストを抑えながら環境性能を成立させる、合理的な技術選択だった。

MAZDA CX-60 XD-HYBRID Premium Sports(3.3L直列6気筒ディーゼル搭載)
出典: マツダ株式会社

マツダのディーゼルへのこだわりは、その後も続いている。CX-60、CX-80には、マツダ初となる量産直列6気筒ディーゼルエンジン「SKYACTIV-D 3.3」が搭載された。最高出力231PS、最大トルク500Nmという数値は、かつて高級ブランドの象徴だった直列6気筒の走りを、400万円台から手にできる選択肢として提示している。

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一方で、2026年5月21日に発売された新型CX-5では、ディーゼルエンジンが姿を消した。搭載されるのは2.5L直噴ガソリンエンジン「e-SKYACTIV G 2.5」とマイルドハイブリッドシステムの組み合わせのみだ。より厳しくなる排出ガス規制への対応コストが、コンパクトなSUVでディーゼルを維持する難しさを増していることがうかがえる。それでも、CX-60やCX-80では直列6気筒ディーゼルの販売が続いている。マツダにとってディーゼルは、車格やセグメントに応じて役割を再定義しながら、これからも技術の選択肢であり続けそうだ。

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排出ガスを浄化する尿素SCRシステムを世界で初めて量産化したのは、乗用車メーカーではなく日本のトラックメーカーだった。日産ディーゼル工業(現・UDトラックス)が「FLENDS」と名付けたシステムを開発し、2004年に大型トラック向けとして実用化している。乗用車の世界でクリーンディーゼルが注目される何年も前から、大型車の現場では窒素酸化物との戦いが続いていたことになる。マツダのSKYACTIV-Dが低圧縮比という別解を選んだ背景にも、こうした先行技術の蓄積があった。

ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの一番の違いは何か

着火の方法が違う。ガソリンエンジンは点火プラグの火花で混合気を燃やす火花点火、ディーゼルエンジンは高圧縮で生まれた熱で軽油を自然発火させる圧縮着火だ。この違いが圧縮比の設計や、燃費・トルク特性の差を生んでいる。

ディーゼルエンジンはなぜ燃費が良いのか

圧縮比の高さとポンピングロスの少なさから熱効率が高く、同じ燃料でより長い距離を走れるためだ。ガソリンエンジンより2割前後燃費で優位に立つという試算もある。低回転域から出る大きなトルクも、力を無駄なく路面に伝えられる一因になっている。

マツダのSKYACTIV-Dの何がすごいのか

当時のディーゼルエンジンとしては際立って低い14.0という圧縮比を実現し、高価な窒素酸化物除去触媒を使わずに排出ガス規制をクリアした点にある。2012年発売のCX-5に初搭載され、コストを抑えながら環境性能と走行性能を両立させる設計思想を示した。