プジョー RCZ Vision発表 初代の意匠を継ぐ電動クーペ
初代RCZの意匠を受け継ぎながら、全固体電池とステアバイワイヤを備えたプジョーの電動クーペ「RCZ Vision」。ダブルバブルのルーフやアクティブリアスポイラーの継承点、Hypersquareと呼ぶ新しい操舵デバイス、次期E-208と共通の市販技術との関係を整理する。市販車の発表ではないコンセプトカーが、何を先に見せたのかを読み解く。
プジョーは2026年10月11日、電動クーペのコンセプトカー「RCZ Vision」を発表した。2009年から2015年の初代RCZの後継という位置づけで、10月12日から18日のパリモーターショーに、世界初公開車の1台として出展した。
初代RCZの形を、全固体電池や、タイヤと機械的につながらないステアリングといった新しい技術で再解釈した1台であり、新しいデザイン言語「Feline Future」の最初の表現でもある。ただし、市販車の発表ではない。

プジョー RCZ Visionとは何か
ステランティスは2026年10月11日、パリモーターショーの前夜にパリで開いたイベント「The Night Before」で、同ショーに登場する9台のコンセプトカーのうち6台を披露した。プジョーからの1台がRCZ Visionだった。
プジョーは2026年10月12日から18日のパリモーターショーの4号館に、RCZ VisionとE-T16 CONCEPTの2台の世界初公開車を置き、どちらにも新しい操舵デバイスのHypersquareを搭載した。
プジョーは、RCZ Visionをブランドの方向性を示す「マニフェスト」、つまり宣言として位置づけている。CEOのアラン・ファヴェイは「感情を中心に据えたこのマニフェストは、プジョーの大胆さを体現し、デザインと技術がなめらかに結びついて、直感的で、洗練され、強く欲しくなる体験をつくれることを示す」と述べている。
初代RCZから受け継いだ意匠
初代RCZの出発点は、2007年秋のフランクフルトモーターショーに出展されたコンセプトカーだ。量産版は2009年に同じフランクフルトで公開された。開発の目標は、コンセプトカーの形にできるだけ近い量産車を作ることだった。その象徴が、ルーフの左右に2つの膨らみを持つダブルバブルの形だ。


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プジョーは、初代から受け継いだ要素として、ルーフとコックピットのアーチ、リアスポイラー、ホイールの意匠を挙げている。ルーフでは、ガラスのバブル形状がボンネットから車体後端まで延び、ダブルバブルの形は後席の空間を確保するために強調された。アーチは、細く、浮いて見える形に改められた。
アクティブリアスポイラーは、停止中は見えず、走行中だけ展開する。この仕組みは初代と共通する。前21インチ、後22インチの鍛造アルミホイールには、リム周りに小さな三角形のデザインが入り、初代RCZのホイールにあった意匠を受けている。
変わった点もある。初代が2+2だったのに対し、RCZ Visionは後席に大人2人が座れる専用の4座だ。

Feline Futureが示す外装と4座の室内
RCZ Visionは、新しいデザイン言語Feline Futureの最初の表現だ。自由、勇気、優雅さ、内に秘めた力、本能の5つを原則に掲げ、外装では、ネコ科の動物がわずかに前傾して飛びかかる直前のような構えを目指した。細く透明なキャビンと、幅広く彫刻的な車体の対比が、その構えをつくっている。
プジョーのデザインディレクター、マティアス・オサン(Matthias Hossann)は、この言語を「ネコ科の力強さと素材の精密さの緊張から生まれた、本能的で官能的なデザイン」と説明する。

外装で目を引くのは光の意匠だ。プジョーを象徴する3本の爪を、細く水平に並べ直した。前面ではその上に薄型レンズのLEDヘッドランプが載り、ライオンの目つきをつくる。照明付きのエンブレムと、バンパーに微細な穴で描いた「RCZ」の文字も前面の特徴だ。後部では、3本の水平な爪にすべての灯火機能を統合した。

室内は、アルカンターラと再生素材のレザーで仕立て、全体を明るい水色で統一した。シートには、皮革製品の端材から作るPELINOVAレザーを使う。後席の背もたれは倒して荷室を広げられる。ダッシュボードの時計はフランスの時計メーカーSERICAが手がけ、エアコンの吹き出し口は使わないときにダッシュボードへ収まる。
Hypersquareと全固体電池の技術
室内の主役は、操舵デバイスのHypersquareだ。手元の4つのリングに主な機能が集まり、ステアリングから手を離さずに操作できる。ステアバイワイヤと呼ぶ方式と組み合わされ、ステアリングとタイヤの間に機械的なつながりがない。操舵は完全に電子制御で、操舵比は車速に応じて変わる。低速では回転角が最大でも1回転に満たず、一般的なステアリングの3回転と比べて、持ち替えずに曲がれる。高速では操舵比を下げて落ち着きを保つ。

ブレーキも同じ考え方で改められた。ペダルとブレーキをつなぐ油圧を電子制御に置き換えたブレーキバイワイヤは、プジョーとして初めての採用だ。狙いは、ブレーキ操作の精密な調整と、回生ブレーキとの滑らかな統合にある。
ディスプレイの考え方は、画面を増やす流れとは逆を向く。Hypersquareのすぐ上には、必要な情報だけを運転者の視界に表示する透明なマイクロLEDのメーターを置いた。縦長のセンターディスプレイも透明な構造で、完全にオフにすると視界からほぼ消える。空調や走行モードの操作は、宙に浮くような造形のセンターコンソールに並べた。すりガラスの面に、アルミ削り出しの物理コントロールが載る。量より質を選んだ構成だ。
電動パワートレインの数字は、出力が500PS(368kW)、航続距離が最大600kmで、10%から80%までの充電は10分で済む。支えるのは、ファクトリアル・エナジーと共同開発した全固体電池と、1,000Vの電気システムである。全固体電池は電解質に液体ではなく固体を使い、小さな体積により多くの電気を蓄えられる。RCZ Visionの電池は厚さ110mmで、低く流れるようなシルエットにも寄与している。
コンセプトと市販車の距離
初代RCZは、コンセプトカーの形を量産でも守ろうとしたクルマだった。後継のRCZ Visionは、形そのものよりも、操作と電動化の技術に重心があると考えられる。
Hypersquareは、コンセプト専用の飾りではない。RCZ Visionに載るのは、次期E-208に搭載される市販版と同じものだ。プジョーは2025年11月12日、Hypersquareとステアバイワイヤを含む技術を2027年以降に導入すると示し、ステアバイワイヤは2027年から市販のプジョーで使えるようになると説明している。
クーペという形は、プジョーが向かう方向を示す見本であり、操作系は次の量産車に先行して見せる予告と読める。初代のダブルバブルルーフがコンセプトの形を守ったように、RCZ Visionは、次の世代のプジョーが何を大切にするかを、1台のクーペで先に示した。
RCZ Visionの主な数値
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出力 | 500PS(368kW) |
| 航続距離 | 最大600km |
| 急速充電 | 10%から80%まで10分 |
| 電池 | 全固体電池、厚さ110mm。ファクトリアル・エナジーと共同開発 |
| 電気システム | 1,000V |
| 構造 | 次世代プラットフォームSTLA Oneをベースにした構造 |
| 座席数 | 4座 |
初代RCZには、欧州全体で先着200台の限定車が用意された。この小さなシリーズは、48時間で売り切れた。
プジョー RCZ Visionは市販されるのか
プジョーは、RCZ Visionを市販車の発表ではなく、将来の方向性を示すコンセプトカーと位置づけている。一方で、搭載されるHypersquareは次期E-208に載る市販版と同じものだ。
Hypersquareとは何か
プジョーの新しい操舵デバイスで、手元の4つのリングから主な機能を操作できる。ステアバイワイヤと組み合わせると、回転角は最大でも1回転に満たない。
プジョー RCZ Visionと初代RCZの違いは何か
初代が2+2だったのに対し、RCZ Visionは専用の4座で、全固体電池の電動パワートレインを積む。ルーフ、リアスポイラー、ホイールの意匠は、初代から受け継いでいる。
この記事について
- 執筆
- ROADECT編集部
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