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日産テラノPHEVコンセプト 北京モーターショー2026で名門復活
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日産テラノPHEVコンセプト 北京モーターショー2026で名門復活

日産が2026年の北京モーターショーで世界初公開した『テラノPHEVコンセプト』。1986年初代以来、日産のSUV史を象徴してきた『テラノ』の名前を、中国主導の電動車戦略のなかで復活させた1台の意味を読み解く。量産モデルの輸出計画まで含めた戦略的な位置づけまで整理する。

日産自動車が、2026年4月24日に開幕した北京モーターショー2026で、新エネルギー車のSUVコンセプトカー2台を世界初公開した。1台は中国の若年層を狙った「アーバンSUV PHEVコンセプト」。そしてもう1台が、日産のSUV史に深く刻まれてきた名前を背負って登場した「テラノPHEVコンセプト」だ。

プレスリリースで日産は、テラノPHEVコンセプトを「日産にとって象徴的なネーミングを復活させるモデル」と位置づけた。長年にわたって培われてきたオフロードでの走行性能を継承しつつ、最新のプラグインハイブリッド技術を組み合わせたという。1986年に初代が登場して以来、日産が世界各地で展開してきた「テラノ」というオフローダーの名前が、中国主導の電動車戦略のなかで再び動き出そうとしている。

出典: 日産自動車株式会社 公式YouTubeチャンネル

北京モーターショー2026で世界初公開された2台の新型SUV

第19回北京国際自動車展覧会、Auto China 2026は2026年4月24日に開幕した。会期は5月3日まで、会場は中国国際展覧センター(順義館)と首都国際会展センターの2拠点に分かれ、総展示面積は38万平方メートルにおよぶ。テーマは「Future of Intelligence」。中国市場のスピード感を象徴するように、欧米日のメーカーと中国メーカーが新エネルギー車を競うように発表する場になっている。

日産が披露したのは、いずれもプラグインハイブリッドを搭載するコンセプトSUVだ。アーバンSUV PHEVコンセプトは中国の若い客層をターゲットに開発され、すでに中国で発売されているNX8や日産の将来のSUVラインアップに通じるデザイン要素を取り入れている。一方のテラノPHEVコンセプトは、4月の北京で公開された写真の多くが砂漠ロケで撮影されており、その性格づけを視覚的にも明確に打ち出している。

両コンセプトの市販モデルは1年以内に発表される予定だ。さらに日産は、同じく1年以内に中国市場で新たに3車種の電動車を投入する計画も明らかにした。

砂漠の風景の中で、夕暮れの光を受け、右側面を向けて停車している赤橙色のテラノPHEVコンセプト
出典: 日産自動車株式会社

「テラノ」という名前が背負ってきたもの

テラノPHEVコンセプトを読み解くうえで欠かせないのが、この名前の重みだ。

初代テラノは、1986年7月に発売されたWD21型に始まる。直列4気筒2.4Lガソリンの「Z24i/KA24E」、V型6気筒3.0Lガソリンの「VG30i/VG30E」、そして直列4気筒2.7Lディーゼルの「TD27」を搭載した本格オフローダーで、日本では「テラノ」、北米では「パスファインダー」として展開された。当時のカタログ写真で印象的だったのは、未舗装路の上に佇む姿そのものだった。

1986〜1995年に展開された初代テラノ(北米仕様パスファインダー、4ドア)
出典: Wikimedia Commons / Photo by IFCAR (Public Domain)

2代目テラノは、1995年10月に登場したR50型だ。日本でも引き続き「テラノ」として販売され、北米では「パスファインダー」を名乗った。上級グレード「テラノレグルス」も設定され、四駆SUVが本格的に乗用車的な使い方へ広がっていく時代の日産の主力として位置づけられた。日本市場では2002年モデルを最後に販売を終え、後を引き継いだのは同じ年に登場したムラーノだった。北米では2004年以降、SUV系の名前は「パスファインダー」に統一されていく。

1995年に登場した2代目テラノ(R50型、日本仕様 StarFire グレード)
出典: Wikimedia Commons / Photo by TTTNIS (Public Domain)

なお、欧州市場ではWD21テラノのプラットフォームを流用した別系統のモデル「テラノII」(R20型)が1993年から並行して展開された。スペイン・バルセロナのNissan Motor Ibérica S.A.で生産され、デザインを手掛けたのはイタリアのI.DE.A Instituteに在籍したエルコレ・スパーダ。フォードへ「Maverick」としてOEM供給され、日本では1994年6月に「ミストラル」として導入されている。「テラノ」を名乗った正系の2代目はあくまでR50型で、テラノIIは別ラインの兄弟モデルという位置づけだ。

1994年6月に日本で「ミストラル」として導入された別系統の小型SUV(欧州では「テラノII」R20型)
出典: Wikimedia Commons / Photo by Vauxford (CC BY-SA 4.0)
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その後、「テラノ」という名前は2013年からインドとロシアで、ルノー・ダスターをベースにしたモデルにも与えられていた。ただ、これは現地戦略のためのバッジエンジニアリング版であり、初代WD21型から続く日産のラダーフレーム式オフローダーとは系譜が異なる。

つまり、北京で公開されたテラノPHEVコンセプトは、日本市場から名前が消えてから20年以上、本流のオフローダーとしての「テラノ」が動き出してから30年以上の時間を挟んでの再起動になる。日産が「象徴的なネーミングを復活させる」と書いたとき、その背景にはこれだけの蓄積がある。

砂漠の起伏のある地形で、斜め前方を向いて走行している赤色のテラノPHEVコンセプト
出典: 日産自動車株式会社

最新PHEV技術とオフロードの継承

テラノPHEVコンセプトは、コンセプトカーの段階で詳細なスペックは公表されていない。日産が明示しているのは、最新のプラグインハイブリッド技術を搭載すること、そして同社が培ってきたオフロードでの高い走行性能を継承することの2点だ。

公開された写真は、その性格づけをそのまま映している。赤橙色のボディは砂と岩が広がる荒野を背景に置かれ、夕暮れの斜光のなかで側面・正面・上方からの構図が並ぶ。上空から見下ろした1枚では、砂地に走行跡が筋を描き、コンセプトでありながら走行ステージを明確に示そうとする意図が読み取れる。

性格づけとして日産が掲げるのは、アウトドアでの走破性と、都市部での快適な通勤という2つのニーズへの対応だ。プラグインハイブリッドが選ばれている理由は、この2つを1台でつなぐ電動パワートレインの特性にある。電動駆動の静かさと立ち上がりのトルクは都市の停止と発進に向き、エンジンとの併用で長距離や非舗装路への不安を抑える構成になる。

なお日産は、北京モーターショー2026の10日前の2026年4月14日に、長期ビジョン「モビリティの知能化で、毎日を新たな体験に(Mobility Intelligence for Everyday Life)」を発表している。そのなかでPHEVは、「パートナーシップを通じてプラグインハイブリッド(PHEV)やレンジエクステンダー(REEV)を提供」する電動化の選択肢として位置づけられた。テラノPHEVコンセプトは、この方針を中国市場のSUVに落とし込んだコンセプトのひとつということになる。

夕暮れの砂漠で、右方向へ走行している赤色のテラノPHEVコンセプトを後方斜めから捉えたショット
出典: 日産自動車株式会社

中国主導のグローバル戦略と輸出計画

注目すべきは、テラノPHEVコンセプトが「中国市場専用車」では終わらない位置づけで紹介された点だ。

日産は2025年以降、中国でN7、フロンティア プロPHEV、N6、NX8といった電動車を矢継ぎ早に投入してきた。N7は中南米とアセアン、フロンティア プロは中南米・アセアン・中東への輸出が決定済みで、すでに発売されたNX8も量産モデルの輸出が計画されている。今回のテラノPHEVコンセプトについても、量産モデルの輸出計画が明言されている。

この流れは、日産が4月14日に示した長期ビジョンの中国の役割と完全に重なる。同社は中国を、日本・米国とともに「3つのリード市場」のひとつと位置づけ、「開発のスピードと高いコスト競争力を生かし、グローバルな輸出を担う拠点」と明確に定義した。中国販売の目標は、2030年度までに年間100万台。これは独立した市場目標であると同時に、輸出ハブとしての規模を意味する数字でもある。

北京モーターショー2026のプレスリリースで、CEOのイヴァン エスピノーサは中国を「非常に競争の激しい市場であると同時に、イノベーションを生み出す源泉」と位置づけ、その力で「中国のお客さま、そしてグローバル市場のお客さまに向けて、新たな価値と体験を創出していく」と語っている。

テラノPHEVコンセプトは、この発言を体現するモデルになる。中国の開発スピードと電動化技術を吸収し、日産がグローバルに積み上げてきたオフロードの作法と組み合わせ、再びさまざまな市場へ届けていく。1台のコンセプトカーが背負う文脈は、車両単体のスペックを超えて広がっている。

夕暮れの空を背景に、左から順にテラノPHEVコンセプト、中央にNX8、右にアーバンSUV PHEVコンセプトが横一列に並んだ3台の集合ショット
出典: 日産自動車株式会社

アーバンSUV PHEVコンセプトとの役割の違い

同時発表された「アーバンSUV PHEVコンセプト」は、テラノPHEVコンセプトとは性格を分けて立ち上げられている。

公開された写真は、ガラス張りの高層ビルが立ち並ぶ都市の高架や街路を走るシーンが中心だ。紫系の流線的なボディは、テラノの赤橙色・砂漠ロケと意図的に対比されている。プレスリリースの言葉でも、ターゲットは「中国の若いお客さま」、性能は「都市部での日常走行に適した」と明記され、アーバンSUVの名前どおり都市生活への寄り添いが軸になっている。

3台が並んだ公式写真では、左にテラノPHEVコンセプト、中央にすでに発売中のNX8、右にアーバンSUV PHEVコンセプトという布陣だ。砂漠を駆ける本格SUV、量産で売れているクロスオーバー、都市の中で映えるアーバンSUV。3台の立ち位置を視覚的に示すことで、日産が中国の電動車ラインアップで描こうとしているSUV像の幅も読み取れる構成になっている。

都市の高架道路を走行する紫系のアーバンSUV PHEVコンセプト
出典: 日産自動車株式会社

名前の復活が問いかけているもの

テラノPHEVコンセプトの公開で見えてきたのは、コンセプトカー1台の発表というより、日産がSUVの遺産をどう次の時代に渡していくかという姿勢だ。

中国で開発し、PHEV技術と電動化のスピードを取り込み、海外へ送り出す。そこに「テラノ」というかつてのオフローダーの名前が乗ることで、戦略は一気に物語を帯びる。本格オフローダーの遺産を、PHEVを軸とした現代のSUVへと接続していく選択。それは中国主導の電動化に対して、ブランドの記憶をどう繋ぐかという問いへの答えでもある。

市販モデルの発表は1年以内、つまり2027年4月までを想定する時間軸にある。そのときテラノは、コンセプトの段階で示されたオフロード性能とPHEVの組み合わせを、どこまで具体化してくるのか。砂漠の中で夕日を浴びるあの赤橙色のシルエットは、日産が次にどんな本気を見せるのかを静かに告げているように見える。

1986年に発売された初代テラノ(WD21型)は、北米市場で「パスファインダー」として販売された同じクルマだ。日産は2004年以降、SUVのこの系統の呼称を世界的に「パスファインダー」へ統一していく。北京で復活した「テラノ」という名前は、20年以上続いてきたその統一の流れに、中国主導の電動車戦略から差し込まれた久しぶりの例外でもある。

テラノPHEVコンセプトはいつ公開されたか

2026年4月24日に開幕した北京モーターショー2026の日産ブースで世界初公開された。同時に「アーバンSUV PHEVコンセプト」も披露されている。

テラノという名前は過去にどんなクルマに使われていたか

1986年に発売された初代テラノ(WD21型)は、日本では「テラノ」、北米では「パスファインダー」として展開された本格オフローダーだ。2代目は1995年登場のR50型で、日本では引き続き「テラノ」として販売されたが、2002年モデルを最後に日本市場から退いた。なお1993年から欧州で展開された「テラノII」(R20型)はWD21のプラットフォームを流用した別系統の兄弟モデルで、日本では1994年に「ミストラル」として導入されている。

テラノPHEVコンセプトの市販モデルはいつ発表されるか

日産は両コンセプトの市販モデルを1年以内に発表する予定だと明らかにしている。さらにNX8と並んで、テラノPHEVコンセプトの量産モデルの輸出も計画されている。

北京モーターショー2026の会期はいつか

会期は2026年4月24日から5月3日まで。会場は中国国際展覧センター(順義館)と首都国際会展センターの2拠点で、総展示面積は38万平方メートルにおよぶ。