マツダ ロードスター2026年商品改良 特別仕様車PSとMT新制御を追加
マツダは2026年6月26日にロードスターの商品改良を発表した。新設の特別仕様車PS(366.3万円)はビルシュタイン・Brembo・RAYSを標準装備。MT全車にヒール&トゥアシストなど3種の走行制御を追加。2026年9月上旬発売モデルの全内容を解説する。
2026年6月26日、マツダはロードスターとロードスターRFの商品改良を発表し、同日から予約受付を開始した。発売は2026年9月上旬を予定している。目玉は走行に特化した特別仕様車「PS」の新設定と、MT車全グレードへの走行制御追加だ。「電子制御で走りをより楽しくする」という方向性を、ロードスターが本格的に打ち出した改良だといえる。
ロードスター2026年商品改良の概要
今回の改良は大きく4つに整理できる。特別仕様車「PS」の新設定、MT車向け走行制御の追加、インダクションサウンドエンハンサーのソフトトップ全車標準化、そして新色ジンクグリーンメタリックの追加だ。
ND型ロードスターは2015年に4代目として登場した。11年目を迎えた現行モデルに、マツダが選んだのは「走りの楽しさを守りながら深める」方向性だった。スペックの数値を追うのではなく、ドライバーが感じる楽しさの質を高める改良として設計されている。
特別仕様車PS ビルシュタイン・Brembo・RAYSを一体で
PSはS Special Packageをベースに、走行関連装備を上積みした特別仕様車だ。マツダは「MAZDA SPIRIT RACING ROADSTERで培った技術や知見を織り込み、ロードスターの本質である走りの楽しさをよりダイレクトに体感できるモデル」と説明している。MAZDA SPIRIT RACINGはマツダのモータースポーツ活動ブランドで、ロードスターを使ったワンメイクカップレースを主催している。そこで検証した足回りセッティングや制御技術を市販車に落とし込んだのがPSという位置づけだ。
PSが標準で備える走行装備は、シルバー塗装Brembo製対向4ピストンキャリパーのフロントベンチレーテッドディスクブレーキ、前後大径ブレーキローター、ビルシュタイン製ダンパー、16×7インチのRAYS社製ブラック塗装鍛造アルミホイール、フロントサスタワーバー、トンネルブレースバー、ボンネットインシュレーターだ。
価格で比べると、PSが366.3万円(6MT)であるのに対し、RSはベース374万円に別途メーカーセットオプション33万円を加えた実質407万円になる。PSはRSより約41万円安く、かつビルシュタインとBremboとRAYSの3点を標準で確保できる。
ただし、RSにあってPSにない装備もある。非対称LSDとDSC-TRACKモードはRS専用の設定だ。PSはサーキットを攻めるためではなく、街中からワインディングまでの「ピュアなスポーツ走行」を楽しむことに重点を置いたグレードとして設計されている。
トランスミッションは6MTのみの設定。インテリアはブラック系で統一されており、エアコンレバー外側の加飾・空調ダイヤル・エンジンスタータースイッチリングがすべてブラックで揃えられている。ソフトトップはクロス素材のグレーがPSの専用設定だ。
MT車に加わった3つの走行制御
MT車全グレードに共通して追加された走行制御が3つある。ヒール&トゥアシスト制御、加速応答改善制御、レブリミット制御の最適化だ。いずれもMT車専用で、AT車には非対応となっている。
ヒール&トゥアシスト制御
ヒール&トゥとは、ブレーキを踏みながらアクセルをあおり、シフトダウン時のエンジン回転数を合わせる操作のことだ。コーナー手前で意識的に行う必要があり、操作が不足するとエンジンブレーキが強くかかり車体が不安定になることがある。
今回追加されたアシスト制御は、ブレーキを少ししか踏まない状況でのシフトダウンにおいて、アクセル煽り不足によるギクシャク感を改善するものだ。交差点での減速や停止線手前、ワインディング進入時といった日常的な場面で効果を発揮する。アクセルをしっかり踏んでいる状況や積極的な操作が行われているときは介入しない設計で、技術を代替するのではなく「普通の街乗りでの小さなぎこちなさをなくす」補助として機能する。
加速応答改善制御
街中での再加速や追い越し時に、アクセル操作から車両の反応までの時間を短縮する制御だ。マツダは「意のままに操れる感覚」と「軽やかでスッキリとした加速感」の向上を目指したと説明している。
ロードスターの1.5Lエンジンは最高出力136PS、最大トルク152Nmと、数値だけを見れば控えめだ。その分、アクセルに対する素直な反応が走る楽しさに直結する。応答性の改善は、エンジンの絶対性能ではなく「感覚としての楽しさ」を磨く改良といえる。
レブリミット制御の最適化
レブリミット回転直前まで出力を絞らずに走行できるよう制御を変更した。従来は回転数上限に近づくにつれて出力が絞られ始めていたが、その介入タイミングを見直した。より上まで力強く回り続けるエンジンの感覚が、ドライバーに届くようになる。
3つの制御はいずれも「走りを電子制御に委ねる」方向ではなく、「ドライバーが意図した操作がより素直に伝わる」方向に働く。ロードスターにとってMT車で走ることは文化でもある。今回の改良は、その文化を電子制御で守ろうとする試みだといえる。
インダクションサウンドエンハンサーの全車標準化
インダクションサウンドエンハンサー(ISE)は、吸気経路から音を分岐させ、ダッシュボード下を通じて車内に届ける装置だ。スピーカーや合成音源を使わず、実際のエンジン音を引き込む仕組みのため、走行状況に応じて自然に音が変化する。
SKYACTIV-G 1.5では「軽快な音色」に、SKYACTIV-G 2.0では「力強い音色」になるよう、それぞれ個別にチューニングされている。排気量に合わせて音の質感を設計するという発想は、エンジン音を「楽器」として扱う思想に近い。
今回の改良でISEがソフトトップモデル全車に標準装備された。同時に静音タイヤの採用やサイレンサーの大型化など、騒音規制への対応も実施されている。外に向かっては音を絞り、室内では音の楽しさを守る。この方向性は、ロードスターが「走る楽しさ」を定義する際に音を重要な要素として扱ってきた姿勢と一致する。なお、ロードスターRFではISEはオプション設定のままで、今回の全車標準化の対象外となっている。
新色ジンクグリーンメタリックとその他の変更
新たに追加されたボディカラーはジンクグリーンメタリックだ。マツダは「タフさと洗練さを両立した外観により、ピュアでスポーティな世界観を強化する」と説明している。全グレードに設定可能で、6.6万円(消費税込)の追加費用がかかる。
これでロードスターのボディカラーはジェットブラックマイカ、ディープクリスタルブルーマイカ、エアログレーメタリック、新色ジンクグリーンメタリック、ソウルレッドクリスタルメタリック、マシーングレープレミアムメタリック、スノーフレイクホワイトパールマイカの7色展開となる。
その他の変更として、Apple CarPlayとAndroid Autoがタッチパネルでも操作できるようになった。これまでセンターコンソール上のコマンダーコントロールでしか操作できなかったが、8.8インチセンターディスプレイへの直接タッチも可能になっている。全車に標準設定だ。シート安全基準への対応でヘッドレストの最適化も実施されている。
グレードと価格
ロードスター(ソフトトップ / SKYACTIV-G 1.5)
| グレード | MT | AT |
|---|---|---|
| S | 295.9万円 | — |
| S Special Package | 314.6万円 | 326.7万円 |
| PS(特別仕様車) | 366.3万円 | — |
| S Leather Package | 355.3万円 | 367.4万円 |
| S Leather Package V Selection | 360.8万円 | 372.9万円 |
| RS | 374万円 ※ | — |
| NR-A | 312.4万円 | — |
※ RSはメーカーセットオプション(Brembo・RAYS鍛造等)33万円を別途設定。装着時の実質価格は407万円。
ロードスターRF(リトラクタブルハードトップ / SKYACTIV-G 2.0)
| グレード | MT | AT |
|---|---|---|
| RF S | 385万円 | 388.3万円 |
| RF VS | 421.3万円 | 424.6万円 |
| RF RS | 436.7万円 ※ | — |
※ RF RSもメーカーセットオプション(Brembo・RAYS鍛造等)33万円を別途設定。装着時の実質価格は469.7万円。
価格はすべてメーカー希望小売価格(消費税10%込)。発売予定は2026年9月上旬。予約受付は2026年6月26日から始まっている。
ロードスターが選んだ進化の方向性
今回の改良を通じて見えるのは、マツダがロードスターのMT文化を守りながら深化させるという明確な意志だ。ヒール&トゥアシストも加速応答改善制御も、ドライバーに「余裕」を作り出すための制御として設計されている。技術が介入することで、操作への集中が楽になり、走ることそのものを楽しめる時間が増える。
PSは、その哲学を形にした存在だといえる。RSより手頃な価格でビルシュタインとBremboとRAYSを確保できる。サーキット攻略ではなく、日常のワインディングでロードスターをより楽しく乗るための選択肢として設計されている。4代目として11年間走り続けてきたロードスターが、まだ深められる楽しさを持っていることを、この改良は示している。
「ヒール&トゥ」という名称は、第二次世界大戦以前の自動車のペダル配置に由来する。当時はアクセルペダルがクラッチとブレーキの中央に配置されており、右足のかかと(ヒール)でブレーキを踏みながら、つま先(トゥ)で中央のアクセルをあおる操作が文字どおり「ヒールとトゥの使い分け」だった。現代ではペダル配置が変わり操作方法も変化したが、名称だけが「ヒール&トゥ」として残っている。
特別仕様車PSとRSの違いは何か
PSが366.3万円(6MT)に対し、RSはベース374万円+メーカーセットオプション33万円で実質407万円だ。両グレードともビルシュタイン製ダンパーとRAYS社製鍛造ホイールを備えるが、BremboキャリパーはPSがシルバー塗装、RSがレッド塗装と異なっている。RSにあってPSにない装備はアシンメトリックLSDとDSC-TRACKモードで、RSはよりサーキット志向が強い設定となっている。
ヒール&トゥアシスト制御はどう動くのか
ブレーキを弱く踏んでいる状況でシフトダウンした際に、エンジン回転数が不足して生じるギクシャク感を軽減する。アクセルをしっかり踏んでいるときや積極的な操作が行われているときは介入しない。日常的な交差点や停止線手前での操作を滑らかにするための補助機能として設計されており、MT車全グレードに標準設定されている。
インダクションサウンドエンハンサーとは何か
吸気経路から実際のエンジン音を分岐させ、ダッシュボード下を通じて車内に届ける装置だ。スピーカーや合成音を使わず、走行状況に連動した自然な音質が特徴。1.5Lは軽快な音色、2.0Lは力強い音色にそれぞれチューニングされている。今回の改良でソフトトップモデル全車に標準装備された。ロードスターRFはオプション設定のままだ。




