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フェラーリ・ルーチェ発表 フェラーリ初のフルEV 全スペック解説
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フェラーリ・ルーチェ発表 フェラーリ初のフルEV 全スペック解説

2026年5月25日、フェラーリはブランド史上初のフルEV「Ferrari Luce」をローマで発表した。4ドア・5シーターという初の形式に、Apple元チーフデザインオフィサーのジョニー・アイブ率いるLoveFromのデザイン、最高出力1,050cv・航続530km以上のスペック、そして「人工サウンドは使わない」という哲学が同居する1台だ。

2026年5月25日、フェラーリはローマでブランド史上初のフルEV「Ferrari Luce(フェラーリ・ルーチェ)」を発表した。4ドア・5シーターという新しい形式を採り、デザインをApple元チーフデザインオフィサーのジョニー・アイブ率いるクリエイティブ集団LoveFromが手がけた1台だ。最高出力1,050cv、航続距離530km以上という数値と、「人工サウンドは使わない」という哲学の両方が、この車には同居している。

Ferrari Luce フロント3/4ビュー(ライト点灯)
出典: © Ferrari S.p.A. / Scuderia Ferrari Press Office

Ferrari Luce 初勝利と同じ日付に選んだローマ

Luceはイタリア語で「光」を意味する。未来を照らすという意志が、名前そのものに込められている。

フェラーリが発表の地として選んだのはローマのヴェラ・ディ・カラトラバだ。1947年5月25日、ドライバーのフランコ・コルテーゼがフェラーリ125 Sを駆り、グラン・プレミオ・ディ・ローマ(カラカラ浴場サーキット)を制した。フェラーリにとって初の勝利が刻まれた日付と、79年後のルーチェ発表を重ねている。

フェラーリはこのモデルを「電動フェラーリ」とは呼ばない。「まったく新しいフェラーリ」という言葉を選ぶ。V12・V8・ハイブリッドの既存モデルとの共存が明言されており、電動化は従来のパワートレインを置き換えるものではなく、フェラーリが扱える選択肢を広げるものと位置づけられている。2022年のキャピタルマーケットデーで掲げた「技術的中立性」の方針が、ルーチェという形になった。

Ferrari Luce フロント3/4ビュー(別角度)
出典: © Ferrari S.p.A. / Scuderia Ferrari Press Office

フェラーリ史上初の5シーター 電動が開いた室内空間

ルーチェはプロサングエに続くフェラーリ2台目の4ドアモデルで、5シーターはフェラーリ史上初だ。V型エンジンとトランスアクスルを組み合わせる従来の設計がセンタートンネルを必要としていたのに対し、122 kWhのバッテリーパックを床下に構造体として統合する電動プラットフォームがトンネルを消した。後席3名が横並びで座れる広さは、この選択の直接的な結果だ。

全長5,026 mm、全幅1,999 mm(ミラーなし)、ホイールベース2,961 mm。車両重量は2,260 kgだが、重心高はプロサングエより95 mm低く、ヨー慣性モーメントは15%小さい。実重量から約400 kg軽い車と同等の方向転換応答性を持つとフェラーリは説明する。

パワートレインは1輪に1基ずつ、計4基の電動モーターで構成される。フェラーリF80由来の永久磁石同期モーターを前後各2基に配置し、最高出力は1,050 cv(772 kW)。0-100 km/hは2.5秒、0-200 km/hは6.8秒、最高速度は310 km/hだ。充電は最大350 kW対応のDC急速充電に対応し、20分で70 kWhを補充できる。航続距離は530 km以上(推定値)。

Ferrari Luce 室内空間
出典: © Ferrari S.p.A. / Scuderia Ferrari Press Office

LoveFromが手がけた外観と内装

フェラーリがデザインを社外のチームに委ねるのは今回が初めてだ。LoveFromはジョニー・アイブとマーク・ニューソンが2019年に設立した集団で、建築・映像・グラフィック・インダストリアルデザインなど複数分野の専門家で構成される。ジョニー・アイブはiPhoneをはじめとするApple製品の外観設計を長年率いてきた人物として知られる。

外観の中心は「グラスハウス」と呼ばれる大面積のガラスキャビンだ。シェル状の形状がベルトラインを超えて車体の端まで延びており、その外側にフロントとリアのエアロウイングがそれぞれ独立して浮かぶ。ライトオフ時はライトパネルが面に溶け込み、面の連続性を維持する設計だ。テールランプは360モデナと458イタリアへの目配りを含む「ハロー」デザインを採用する。ホイールはフロント23インチ・リア24インチのスタガード構成で、フェラーリ市販車史上最大の組み合わせとなる。

Ferrari Luce グラスハウス・フロント3/4ビュー(別アングル)
出典: © Ferrari S.p.A. / Scuderia Ferrari Press Office

内装は、ステアリングホイール・計器類・コントロールパネルのそれぞれが独立した設計哲学を持つ。3本スポークのステアリングホイールは100%リサイクルアルミ製。計器類は独立筐体「バイナクル」に3つのダイヤルとして集約され、Samsung Display製OLEDスクリーン4面と組み合わさる。キーはCorning Gorilla Glass製でE Ink(電子インク)ディスプレイを内蔵しており、差し込むとフェラーリのロゴの黄色がインターフェース全体に広がる仕掛けだ。自動車へのE Ink採用は業界初となる。

Ferrari Luce インテリア全景
出典: © Ferrari S.p.A. / Scuderia Ferrari Press Office

音と走りの哲学 フェラーリがEVに与えた答え

「電動フェラーリにおけるサウンドは、本物であり、走行体験に機能するときにのみ存在してよい」。フェラーリが5年間・4万 kmの専用テストを経て辿り着いた結論だ。人工生成のサウンドは一切採用しなかった。

リアアクスルハウジングの中央に設置された精密加速度計が、回転部品の固体伝達振動をリアルタイムで捕捉する。このシグナルをフェラーリ独自の処理システムがフィルタリングし、エレキギターのアンプと同じ原理で増幅する。左右のアクスルから独立したコンテンツを取得するため、トルク配分の変化が音に即座に反映される。フェラーリが独自開発し、特許を取得したシステムだ。

増幅が作動するのはe-マネッティーノの「Perfo」ポジション(Performanceモード)のみだ。Rangeモードでは完全な静粛性が選べ、Performanceモードではパドル操作に連動してサウンドレベルが変化する。聴覚を通じてトルクの変化が伝わる設計であり、内燃機関のフェラーリが持っていた「感覚的な対話」を電動でも実現しようとしている。

走行制御の中心を担うのは、ルーチェで初登場するVCU(Vehicle Control Unit)だ。パワートレインとダイナミクス制御を1つのコントローラーに統合し、1秒間に200回目標値を更新する。Side Slip Control X・FLOW(Ferrari Lateral Optimisation Wheeltorque)・eTracの3システムが連携し、4輪独立のトルクベクタリングを常時最適化する。eTracはF1-Tracのノウハウを継承したトラクション制御システムだ。コーナーの入口では左パドルで回生制動力を段階的に設定し、出口では右パドルで加速トルクを積み上げる連続的なコントロールが、電動ならではの特性として設計されている。

Ferrari Luce インテリア・コックピット
出典: © Ferrari S.p.A. / Scuderia Ferrari Press Office

主要スペック

項目
電動モーター4基(1輪1基)
最高出力1,050 cv(772 kW)
0-100 km/h2.5秒(ローンチコントロール時)
0-200 km/h6.8秒
最高速度310 km/h
航続距離(推定)530 km以上
バッテリー122 kWh / 800 V
最大充電速度350 kW DC
急速充電の目安20分で70 kWh
車両重量2,260 kg
全長×全幅×全高5,026 × 1,999 × 1,544 mm
ホイールベース2,961 mm
トランク容量597 L
新特許数60件以上

フェラーリ125 Sは、1947年にわずか2台だけ製造されたV12エンジン搭載のレーシングカーだ。排気量はわずか1.5リッター。そのクルマが刻んだ初勝利と同じ日付に、出力1,050cv・バッテリー容量122kWhのフルEVが発表された。数字の開きは埋めようのない規模だが、「これまで不可能だったことを可能にする」という意志は、どちらの車にも同じように通底している。

Ferrari Luceとはどんな車か

フェラーリ史上初のフルEVで、4ドア・5シーターの大型グランドツーリングカーだ。プロサングエに続く2台目の4ドアモデルで、5シーターはブランド初の採用となる。電動アーキテクチャが実現した広い室内空間と、フェラーリDNAのパフォーマンスを両立させている。

なぜフェラーリは社外のLoveFromにデザインを委ねたのか

電動プラットフォームという「制約のない白紙」に向き合うにあたり、フェラーリは外部の視点を意図的に取り込んだ。LoveFromはApple製品の設計を率いたジョニー・アイブとマーク・ニューソンが設立した集団で、自動車設計の文脈に縛られない発想をフェラーリが求めた結果だ。

Ferrari Luceのサウンドはどのように生まれるのか

リアアクスルに設置した精密加速度計が、回転部品の固体伝達振動を直接捕捉する。この信号をフェラーリ独自のシステムがエレキギターのアンプと同じ原理で処理し、増幅する。合成音や外部音源は一切使わず、実機から取り出した音のみを使う設計だ。