日産Vモーションの進化史 2013年誕生から現行デザインまで
日産のデザイン言語「V-motion」は、2013年のコンセプトカー、レゾナンス(Resonance)が起点だ。3代目ムラーノでの量産採用からGT-R、EVアリアの「シールド」、デジタルVモーションまでの進化を一次資料で追う。
軽自動車のルークスにも、量産スポーツカーの頂点に立つGT-Rにも、電気自動車のアリアにも、同じ「顔」の記憶が宿っている。フロントグリルから伸びる逆三角形の面構成と、ボンネットへと駆け上がる鋭い稜線だ。車格もパワートレインもまるで違う日産のラインアップに、なぜ共通の表情が浮かぶのか。その答えは、2013年に生まれた1つのデザイン言語にある。名前を「V-motion」という。
Vモーションとは何か 2013年に生まれた起点
日産から正式に「V-motion」という名前が世に出たのは、2013年1月15日、アメリカ・デトロイトで開催された北米国際オートショーだった。日産が世界初公開したコンセプトカー、レゾナンス(Resonance)は、フロントグリルから始まりボンネットを通ってブーメラン型のヘッドライトへと抜けていく面の流れを「V-Motion」と呼んだ。
レゾナンスのデザインを統括したのは、当時日産のシニアバイスプレジデント兼チーフクリエイティブオフィサーだった中村史郎氏だ。制作を担ったのはアメリカ・サンディエゴの日産デザインアメリカである。プロダクト戦略・企画部門のフランソワ・バンコン氏は、このコンセプトについて科学技術の進歩や、未来に対して楽観的な人々の姿勢から着想を得たと説明している。
レゾナンスはあくまでコンセプトカーであり、市販は想定されていなかった。しかし日産にとって、コンセプトカーは単なるショーの華ではない。量産を見据えた実験場として位置づけられてきた歴史がある。Vモーションもまた、ショーの舞台から現実の道路へと歩みを進めることになる。
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量産第一号は3代目ムラーノだった
Vモーションが初めて量産車に採用されたのは、2014年4月15日に発表された3代目日産ムラーノだ。同年後半に発売されたこのモデルは、レゾナンスが持っていたVモーションのフロントエンドに加え、ブーメラン型の灯火類と、フローティングルーフと呼ばれる浮遊感のあるルーフラインまで引き継いでいる。
日産は3代目ムラーノを「デザイン主導の製品・ブランド再生を象徴する存在」と位置づけている。当時チーフクリエイティブオフィサーだった中村氏は、「軽さ」を新型ムラーノの核に据えたと説明している。そのうえで、Vモーションのフロントエンド、特徴的な灯火類、フローティングルーフという3つの要素を、今後のデザインの柱に据えたという。1台のフェイスリフトではなく、会社全体の方向転換の旗印として、Vモーションは量産車デビューを飾ったことになる。
ちなみにブーメラン型のライトそのものは、Vモーションより前、スポーツカーのフェアレディZ、北米名370Zで先に採用されていた意匠だ。ムラーノではその形状がさらに引き伸ばされ、洗練されている。
Vmotion 2.0とXmotion 立体化する日産の顔
ムラーノでの量産採用から3年足らず、2017年1月9日に日産は再びデトロイトのステージに立った。今度のコンセプトカーの名前は、そのものずばり「Vmotion 2.0」。日産は当時すでに、アルティマ、ムラーノ、マキシマといった量産車にVモーションのフロントエンドを展開していたと説明している。1つのコンセプトが生んだ意匠が、わずか3年でラインアップの標準語になっていた。
このVモーションは、意匠だけにとどまらなかった。2016年に発表されたR35型GT-Rの後期型では、Vモーショングリルが採用されている。日産によれば、その狙いはラジエーターへの通風を高める整流効果にあった。デザイン言語が、高性能スポーツカーの空力性能にまで踏み込んだ瞬間だ。
さらに2018年1月15日、デトロイトでXmotionコンセプトが発表される。デザインを率いたのは、当時グローバルデザインを統括していたアルフォンソ・アルバイサ氏だ。日産は、3代目ムラーノで導入されたVモーショングリルが、ほぼ全ての現行車種に展開・改良されてきたとしている。Xmotionではその形状を、これまでで最も幅広く、奥行きのある、力強いものへと進化させたという。この造形はコンセプトカー自体の名前の由来にもなった。Xmotionが提示した方向性は、2020年6月に発表された3代目ローグの量産デザインに受け継がれている。
日産アリアが示したEV時代の「シールド」
ガソリンエンジンを積まない電気自動車には、ラジエーターを冷やすための大きな開口部は要らない。この現実と正面から向き合ったのが、2020年7月15日に世界初公開された日産アリアだ。
アリアのフロントには、もはや「グリル」ではなく「シールド」と呼ばれる面が据えられている。日産は、これをEV時代に向けて再構築されたグリルと説明する。表面のすぐ下には日本の伝統的な組子模様が織り込まれ、その奥にはProPILOTやインテリジェントキー用のセンサー類が収められている。装飾ではなく、機能を守るための面へと役割を変えたわけだ。
それでも日産は、このシールドをVモーションからの断絶とは位置づけていない。日産はヘッドランプについて、シグネチャーであるVモーションデザインを再発明するものだと説明している。グリルという部品そのものが姿を変えても、Vモーションという名前とその系譜は、EVの時代にも生き続けている。
デジタルVモーションという現在地
もっとも新しい呼び名が「デジタルVモーション」だ。確認できる範囲で、この名称が最初に使われたのは2023年4月17日に発表された、軽スーパーハイトワゴン、ルークスのマイナーチェンジだ。ハイウェイスターシリーズのフロントグリルに、次世代のデジタルVモーションが採用されている。同年12月11日に発表されたノートのマイナーチェンジでも、新時代のデジタルVモーションを採用したフロントグリルが導入された。
軽自動車やコンパクトカーではデジタルVモーションへ、電気自動車ではシールドへ。上位グレードのAUTECHでは、水面のきらめきを模したドットパターングリルという独自の解釈も生まれている。同じ「V」の系譜が、車種やグレードに応じて異なる形へ枝分かれしながら、日産のラインアップ全体を今も貫いている。
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街で日産車とすれ違うとき、その顔つきに目を向けてみてほしい。逆三角形のグリルも、組子模様を抱いたシールドも、根をたどれば2013年にデトロイトで披露された1台のコンセプトカーに行き着く。10年以上をかけて姿を変え続けてきた「V」は、軽自動車のグリルにも、スポーツカーの整流板にも、EVのシールドにも刻まれている。日産という会社がどこへ向かおうとしているかは、その1本の線をたどるだけで見えてくる。
Vモーションと並んで3代目ムラーノに引き継がれた「ブーメラン型」の灯火類は、スポーツカーのフェアレディZ、北米名370Zで先に採用されていた意匠だ。スポーツカーの鋭さを表現するために生まれた形が、後にクロスオーバーやSUVの顔つきにまで広がっていった。
日産のVモーションとは何か
日産のフロントグリルからボンネット、ヘッドライトへと連続する逆三角形のデザイン言語だ。日産が2013年のコンセプトカー、レゾナンス(Resonance)で公式に名付け、2014年発表の3代目ムラーノで量産車に初採用した。
Vモーションはどの車種に採用されているのか
軽自動車のルークスやノートといったコンパクトカーから、SUV、GT-Rのようなスポーツカーまで、車格を横断して展開されている。電気自動車のアリアでは「シールド」という形に再解釈されている。
デジタルVモーションと従来のVモーションの違いは何か
呼び名の違いであり、断絶ではない。2023年以降のルークスやノートに採用された最新の意匠を日産は「デジタルVモーション」と呼んでいるが、フロントグリルからヘッドライトへ連続する基本の考え方はVモーション誕生時から変わっていない。
この記事について
- 執筆
- ROADECT編集部
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