スバル フォレスター 現行型全解説 グレードと2つのパワートレイン
現行スバル フォレスターは2025年4月に発売された6代目(SL型)だ。日本カー・オブ・ザ・イヤー2025-2026・グッドデザイン賞2025・JNCAP2025ファイブスター賞の3冠を同年に獲得した。1.8Lターボとストロングハイブリッドe-BOXERの2系統パワートレイン、全8グレードの価格と装備の違い、EXグレード専用アイサイトXの実用価値を整理する。
1997年に登場したフォレスターは、SUVでもワゴンでもない独自の立ち位置を選んだ。レガシィのプラットフォームをベースに水平対向エンジンとシンメトリカルAWDをコンパクトな車体に収め、林道も雪道も普段の通勤も一台でこなすことを目指したクルマだった。
その姿勢は6代目になっても変わっていない。2025年4月17日、スバルは現行フォレスターを発表した。先代SK型から7年ぶりのフルモデルチェンジだ。
日本カー・オブ・ザ・イヤー2025-2026、グッドデザイン賞2025、JNCAP2025ファイブスター賞の3冠。価格は全グレードで400万円を超える。その金額に見合う内容があるかを、パワートレインとグレード選択の観点から整理する。
スバル フォレスター 現行型の立ち位置と世代
現行フォレスターは型式が2つある。ストロングハイブリッドのe-BOXERが5AA-SLG、1.8Lターボが3BA-SL5だ。世代としては6代目にあたり、1997年の初代から数えると28年間にわたる系譜の最新章となる。
| 世代 | 型式 | 発売年 |
|---|---|---|
| 初代 | SF型 | 1997年 |
| 2代目 | SG型 | 2002年 |
| 3代目 | SH型 | 2007年 |
| 4代目 | SJ型 | 2012年 |
| 5代目 | SK型 | 2018年 |
| 6代目(現行) | SL型 | 2025年 |
先代SK型は2018年に「SUBARU GLOBAL PLATFORM」を採用した世代だった。6代目SL型では、パワートレインの大幅刷新とEyeSightの高度化が中心的な変化となる。月販計画は2,400台。スバルが6代目に懸けた力の入れ方は、同年の3冠受賞という結果にも表れている。
1.8Lターボとストロングハイブリッド 2つのパワートレインの特徴と選び方
現行フォレスターの核心はパワートレインの選択にある。2系統は性格が異なるだけでなく、AWDの制御方式まで違う。どちらが上かではなく、何を重視するかで答えが変わる。
ストロングハイブリッド e-BOXER(2.5L)
まず整理しておきたいことがある。ハイブリッドのほうが、大きいエンジンを積んでいる。
e-BOXERに搭載されるFB25型エンジンは2.5L水平対向4気筒の自然吸気だ。最高出力118kW(160PS)/ 5600rpm、最大トルク209N·m(21.3kgf·m)/ 4000-4400rpmを発生する。これにMC2型交流同期電動機を組み合わせる。モーターの最高出力は88kW(119.6PS)、最大トルクは270N·m(27.5kgf·m)だ。
システムの特徴は「モーター主体」にある。低速・市街地ではモーターが走行を担い、高速や高負荷の局面でエンジンが加わる。シリーズ・パラレル方式と呼ばれるこの構成は、トヨタのハイブリッド技術をベースに開発されたシステムだ。
先代SK型のe-BOXERはマイルドハイブリッドだった。2.0Lエンジンが主体でモーターは補助役に過ぎなかった。6代目でその関係が逆転した。
WLTCモード燃費はグレードにより18.4〜18.8km/L。この数字の背景にはAWD制御の工夫がある。e-BOXERには「クラッチ開放制御」が採用されており、高速道路など安定した路面では後輪への駆動力を一時的に切断してFWD状態に切り替える。不要な駆動損失を省いて燃費を稼ぐ仕組みだ。X-MODE作動時とSI-DRIVEのSモード選択時は開放制御を行わない。
車両重量は1730〜1750kg。荷室容量は後席使用時で484L、後席を倒すと1162Lまで広がる(VDA法、参考値)。
1.8L直噴ターボ(DIT)
SPORT系グレードに搭載されるCB18型エンジンは1.8L水平対向4気筒、直噴ターボ、デュアルAVCS付きだ。最高出力130kW(177PS)/ 5200-5600rpm、最大トルク300N·m(30.6kgf·m)/ 1600-3600rpmを発生する。
排気量はe-BOXERのFB25より小さい。しかし最大トルクは大きく、それが1600回転という低い回転域から出てくる。峠道や高速合流でアクセルを踏んだときの余裕は、数字以上に体感しやすい特性だ。
AWDはe-BOXERと異なり「常時全輪駆動」だ。クラッチ開放制御のような介入はなく、4輪への駆動力伝達が常に維持される。WLTCモード燃費は13.6km/L(市街地10.0 / 郊外14.3 / 高速15.5)。車両重量は1640kgで、e-BOXERより90〜110kg軽い。
荷室容量は後席使用時で512L、後席を倒すと1190Lに広がる(VDA法、参考値)。e-BOXERよりわずかに広いのは、床下にバッテリーユニットを持たないためだ。
どちらを選ぶか
燃費差の大きさ(13.6対18〜18.8km/L)だけで選ぶのは難しい。走行パターン・乗り味の好み・初期費用のバランスで答えが変わるためだ。
年間走行距離が長く燃費差を回収したい、市街地での電動走行の静粛性を重視する、SI-DRIVEやEVドライブモードを活用したい人はe-BOXERが合う。初期費用を抑えたい、低回転から出る太いトルクを楽しみたい、軽量ボディの身のこなしを重視する人はターボが合う。
X-MODEは全グレードで標準装備だ。悪路走破性だけで選び分ける必要はない。
グレード一覧と価格 EXグレードが分岐点になる理由
現行フォレスターのグレード体系は8グレードで構成される。
| グレード | パワートレイン | 価格(税込) |
|---|---|---|
| SPORT | 1.8L ターボ | 4,048,000円 |
| SPORT Black Selection | 1.8L ターボ | 4,158,000円 |
| SPORT EX | 1.8L ターボ | 4,191,000円 |
| SPORT EX Black Selection | 1.8L ターボ | 4,301,000円 |
| X-BREAK S:HEV | 2.5L e-BOXER | 4,202,000円 |
| X-BREAK S:HEV EX | 2.5L e-BOXER | 4,477,000円 |
| Premium S:HEV | 2.5L e-BOXER | 4,488,000円 |
| Premium S:HEV EX | 2.5L e-BOXER | 4,598,000円 |
EXグレードが分岐点になる理由
名称に「EX」が付くグレードとそうでないグレードの最大の差は、アイサイトXの有無だ。SPORT対SPORT EXの差は143,000円、X-BREAK S:HEV対X-BREAK S:HEV EXは275,000円、Premium S:HEV対Premium S:HEV EXは110,000円になる。この価格差は主にアイサイトXと連動するアイサイトアシストモニターなどの装備に対応している。
高速道路を長距離走る機会が多いならEXグレードの検討余地がある。通勤や近距離が中心なら、EXでないグレードでも安全装備は充実している。
3系統のキャラクター
Premium S:HEV は上質さを軸に据えたグレードだ。シート素材に東レ製ウルトラスエードやナッパレザーの本革を選べ、オプションのハーマンカードン11スピーカーシステムを装着すると音響環境が一変する。19インチアルミホイール(ダークグレー塗装+切削光輝)が外観の格を引き上げる。
X-BREAK S:HEV はアウトドア指向だ。エナジーグリーンのアクセントカラー、ラダー型ルーフレール、18インチホイール(ダークメタリック塗装)に加え、アクセサリーコンセント(AC100V・1500W)も設定される。キャンプサイトでの電源利用も見越した装備構成だ。
SPORT は1.8Lターボ搭載のスポーティグレードだ。18インチホイールのブロンズ塗装とインテリアのブロンズアクセントが統一感を作る。常時AWDとターボの組み合わせが、走りを重視する層への訴求点となる。
全グレード共通の標準装備
グレード間での共通装備は多い。X-MODE、フルLED灯火類、フルオートエアコン(左右独立温度調整・後席ベンチレーション)、電動パーキングブレーキ、11.6インチインフォテインメントシステム、6スピーカーが全グレード標準だ。フォレスターの価格帯が400万円を超える背景の一端はここにある。
EyeSight XとシンメトリカルAWD フォレスターの安全・走行性能
EyeSightの3層構造
現行フォレスターのEyeSightは3つの層で構成されている。
第1層「アイサイト コアテクノロジー」は全グレードに標準搭載される。プリクラッシュブレーキ、前側方プリクラッシュブレーキ、緊急時プリクラッシュステアリング、後退時ブレーキアシスト、AT誤発進・誤後進抑制制御、ツーリングアシスト、全車速追従クルーズコントロール、車線逸脱抑制、先行車発進通知、標識認識機能などが含まれる。
第2層「アイサイトセイフティプラス」も全グレードに標準搭載される。後側方警戒支援(スバルリヤビークルディテクション)、エマージェンシーレーンキープアシスト、ドライバー異常時対応システムのほか、デジタルマルチビューモニター(フロント・サイド・リヤ・トップ・3Dの5視点)とスマートリヤビューミラーが含まれる。
第3層「アイサイトX」がEXグレードのみに搭載される機能だ。
EyeSightの歴代進化については、初代ステレオカメラの登場から現在の3眼カメラ世代までをまとめた解説記事も参考になる。
関連記事
アイサイト 歴代バージョン完全解説 ver.1から3眼カメラまで
アイサイトXが加える5つの機能
アイサイトXは自動車専用道路(3D高精度地図登録区間)での高度運転支援に特化したシステムだ。5つの機能が加わる。
渋滞時の一定条件下でハンドルから手を離せる「渋滞時ハンズオフアシスト」、停車後に前車の発進を検知してスイッチ操作なしで自動発進する「渋滞時発進アシスト」、ウインカー操作を起点にシステムが車線変更を補助する「アクティブレーンチェンジアシスト」、カーブの曲率に合わせて自動で速度を調整する「カーブ前速度制御」、料金所前に適切な速度まで自動減速する「料金所前速度制御」だ。
高速道路での長距離移動が多い使い方では実用的な機能群だ。主に市街地や近距離での使用が中心なら、EXでないグレードの安全装備でも十分カバーできる場面が多い。
世界初採用:サイクリスト対応歩行者保護エアバッグ
現行フォレスターには世界初となる装備がある。ボンネット一体型のエアバッグで、歩行者に加え自転車乗りとの接触時にも展開するよう設計されている。自転車との共存が求められる都市部での交通環境に対して、設計段階から向き合った結果だ。
AWDと走破性
フォレスターは全グレードでシンメトリカルAWDを標準とする。前後のアクスルシャフトを同じ長さで対称配置することでエンジン・トランスミッション・デフを直線上に並べ、駆動バランスの均等化を理論的に追求したレイアウトだ。X-MODEも全グレード標準搭載で、2モードとヒルディセントコントロールを備える。舗装路から林道・雪道まで守備範囲の広さを維持しているのは、初代から変わらないフォレスターの設計思想だ。
日本カー・オブ・ザ・イヤー2025-2026 選ばれた背景
日本カー・オブ・ザ・イヤーは1980年から続く国内最大の自動車賞だ。選考委員が走行性能・安全性・デザイン・環境性能を総合評価して決める。2025-2026年はフォレスターが受賞した。
なぜフォレスターだったのか。グッドデザイン賞2025・JNCAP2025ファイブスター賞との3冠が一つの答えを示している。デザインの完成度、衝突安全と予防安全の両面での高評価、そしてパワートレインの大幅な進化が同年に重なった。
マイルドハイブリッドからストロングハイブリッドへの転換、フォレスター初採用のアイサイトX、世界初のサイクリスト対応エアバッグ。これらが市販車として実用水準に仕上がっていることが評価されたと見られる。「できた」ではなく「使える」ところまで届いているかどうかは、受賞選考において重要な判断基準の一つだ。
フォレスターが1997年以来積み上げてきたのは、日常と非日常の両方に対応できるという信頼だ。6代目はその信頼を引き継ぎながら、電動化と高度運転支援という新しい軸を加えた。月販計画の2,400台が示す通り、スバルはこの世代に手応えを感じている。
フォレスターという名前はラテン語由来で「森に住む人」または「森林管理者」を意味する。林業・山岳・アウトドアを一言で連想させるネーミングは1997年の初代から28年間変わっていない。スバルの車名には星に由来するもの(アルシオーネ、ステラ)が少なくない中、フォレスターは珍しく「人」と「場所」を同時に想起させる名前だ。水平対向エンジンを「BOXER(ボクサー)」と呼ぶスバルが、職人や管理者を意味する名を選んだことに、このクルマの性格が表れている気がする。
スバル フォレスター e-BOXERは外部充電(プラグイン)できますか?
e-BOXERはストロングハイブリッドだがプラグインハイブリッドではない。外部からの充電はできず、エンジンの発電と回生ブレーキによってバッテリーを補充する仕組みだ。PHEVのようにEV走行距離を大幅に伸ばすことはできないが、市街地では積極的にモーター走行を行い燃費を稼ぐ設計になっている。
アイサイトXはすべてのグレードに付きますか?
アイサイトXはSPORT EX、SPORT EX Black Selection、X-BREAK S:HEV EX、Premium S:HEV EXの4グレードにのみ標準搭載される。EXでないグレードにはアイサイト コアテクノロジーとアイサイトセイフティプラスが標準搭載されており、プリクラッシュブレーキや全車速追従クルーズコントロールなど基本的な安全機能は全グレードに共通している。


