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ランエボ ファイナルエディションはなぜXを名乗らなかったのか
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ランエボ ファイナルエディションはなぜXを名乗らなかったのか

クルマの名前には、作り手の意図が刻まれる。ランサーエボリューション ファイナルエディションが背負うはずのXを名乗らなかった選択には、三菱が23年の歴史をどう終わらせるかという判断が表れている。2014年の生産終了発表から、その名前に込められた意味を読み解く。

2015年8月、三菱自動車はランサーエボリューション ファイナルエディションを発売した。1992年のI型から10代、23年にわたって進化を続けてきたランエボの最後を飾るモデルだ。ベースは明らかにランサーエボリューションX(CZ4A型)であるにもかかわらず、正式名称にXの文字は入っていない。次世代を示すEvolution XIでもなく、ベースであるXの名も背負わず、歴史に幕を下ろしている。

23年10代、ランエボが刻んだ系譜

ランサーエボリューションの出発点は、1992年9月に登場したI型、E-CD9Aだ。WRC(世界ラリー選手権)のグループAクラスに参戦するためのホモロゲーション(均一性認定)モデルとして、ギャランVR-4で培った4G63型ターボエンジンとフルタイム4WDの技術を凝縮して誕生している。

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以降、1994年のII型から2007年のX型まで、三菱はほぼ数年おきにランエボを刷新し続けた。2003年のVIII型以降は北米にも正式導入され、ラリーの舞台を離れた後も、走行性能そのものを競う四駆スポーツセダンとして支持を広げていく。

技術面でも進化は着実に重ねられた。1996年のIV型では、コーナリング中に左右輪の駆動力配分を能動的に制御するアクティブヨーコントロール(AYC)を初めて搭載している。この仕組みは2003年のVIII型でスーパーAYCへと発展し、ランエボのハンドリングを特徴づける核心技術になった。

モータースポーツでの実績も、この時期に頂点を迎えている。フィンランドのトミ・マキネンは1996年から1999年にかけて、ランサーエボリューションを駆ってWRCドライバーズタイトルを4年連続で獲得した。三菱自動車としても1998年に初のマニュファクチャラーズタイトルを獲得しており、ドライバーズ・マニュファクチャラーズの両方でランエボが頂点に立った年になっている。2000年1月には、この偉業を記念した特別仕様車、ランサーエボリューションVI トミ・マキネンエディションが発売されている。ファイナルエディションより15年早く、ランエボはすでに特別仕様車で歴史の節目を刻む術を知っていたことになる。

モータースポーツにおける立ち位置が変わったのは2005年だった。前提にあったのは、2004年に発覚したトラック・バス部門のリコール隠しだ。三菱自動車は販売の急落と資本提携の解消に直面し、三菱重工業・三菱商事・三菱東京UFJ銀行による支援を受けて経営再建に着手している。三菱は2005年12月、この経営再建に伴う経営資源の選択と集中を理由に、2006年からのWRCワークス活動休止を発表した。ランエボは、生まれるきっかけとなったホモロゲーションの役割を、この時点で実質的に終えている。

2015 Lancer Evolution Final Edition(北米仕様)フロント3/4アングル。高架下で撮影されたドラマチックなカット
出典: Mitsubishi Motors North America

ファイナルエディションの正体

国内向けのファイナルエディションは、ランサーエボリューションXのGSR、5速MT車をベースにした限定1,000台の特別仕様車だ。価格は消費税込みで429万8,400円、2015年4月10日の先行予約開始と同時に完売している。

心臓部となる2.0リッター直列4気筒ターボの4B11型エンジンは、排気バルブにナトリウムを封入する手法を採用している。これにより最高出力は従来の300PSから313PSへ、最大トルクは422Nmから429Nmへと引き上げられた。足回りにはビルシュタイン製ショックアブソーバーとアイバッハ製コイルスプリング、ブレーキにはブレンボ製フロントディスクを標準装備し、シートもレカロ製にレッドステッチを加えたスポーティな専用仕様となっている。

限定1,000台に対して、先行予約の受付は開始と同時に終了している。ハイパフォーマンスパッケージを標準装備しながら429万8,400円に価格を抑えたことも、需要の高さを後押ししたとみられる。

ファイナルエディションという名称は、2015年10月に発表された北米仕様にも用いられている。ただし内容は市場ごとに調整されており、北米向けは1,600台の限定生産で、価格は37,995ドル(当時のレートで約460万円)だった。出力は303hp(約307PS)、トルクは305lb-ft(約413Nm)だ。外装にはブラック塗装のルーフやダーククロムメッキのエンケイ製ホイールを備え、センターコンソールには1台ごとの通し番号を刻んだプレートが取り付けられている。

同じX型をベースにしながら、地域ごとに異なる出力と装備で送り出されたのが、このファイナルエディションの特徴だ。両仕様の違いは次の通りだ。

項目国内仕様北米仕様
ベースX型 GSR 5速MTX型 GSR 5速MT
限定台数1,000台1,600台
価格429万8,400円37,995ドル(当時のレートで約460万円)
出力313PS303hp(約307PS)
トルク429Nm305lb-ft(約413Nm)
発表時期2015年4月2015年10月

出力とトルクの差は、地域ごとの排出ガス規制や認証基準に合わせたセッティング調整によるものと考えられる。同じ4B11型エンジンを積みながら、送り出す市場によって仕上げを変える。それもまた、量産効果を見込みにくいニッチな1台を最後まで作り切るための工夫だったのだろう。

2015 Lancer Evolution Final Edition(北米仕様)リア3/4アングル。ブラック塗装のルーフとダーククロムメッキのホイールが確認できる
出典: Mitsubishi Motors North America

なぜXを名乗らなかったのか

三菱がランエボに区切りをつける方針を明らかにしたのは、ファイナルエディション発表の1年以上前、2014年3月28日にさかのぼる。三菱は、現行のX型を最後にランサーエボリューションのフルモデルチェンジを行わないと表明した。次のナンバリングとなるEvolution XIは、この時点で開発対象から外れている。

ここで見落とされがちなのが、ファイナルエディションの正式名称にXすら残されなかった点だ。2000年に発売された特別仕様車、ランサーエボリューションVI トミ・マキネンエディションは、名前に世代を示すVIをきちんと背負っていた。ところがファイナルエディションは、ベースとなった型式さえも名乗らずに送り出されている。

背景にあったのは、ランエボで培われた四輪制御技術を、PHEVをはじめとするエコカーに活用するという経営方針の転換だ。この技術系譜はアクティブセンターデフ(ACD)やAYCを経て、現在は三菱アウトランダーPHEVに搭載されるS-AWCへとつながっている。2005年のWRC活動休止を導いた選択と集中の論理が、10年近い時を経て市販車のラインアップ戦略にも及んだことになる。新たな車台とエンジンを一から開発するフルモデルチェンジには、量産効果を見込みにくいニッチなスポーツセダンには見合わない投資が必要だった。

つまりこの決定は、X型という一世代の延長線上の話ではなく、23年10代続いたランサーエボリューションという名前そのものに幕を引く決断だった。だからこそ最後の一台は、Xという通過点の名前ではなく、ファイナルエディションという到達点の名前で送り出されたのだろう。

需要が消えていたわけではない。国内向け1,000台は先行予約と同時に完売しており、市場からの支持は最後まで衰えていなかった。それでも三菱が選んだのは、新型を起こす投資ではなく、既存のX型に磨きをかけて送り出すという道だった。

ナンバリングを重ねない、という選択の意味

番号を手放してファイナルエディションと名乗ったことには、三菱なりの覚悟が滲む。中途半端に世代を引き延ばすのではなく、限られた資源の中で可能な限りの熱量を注いだ一台として送り出している。

同じくラリー由来の四駆スポーツセダンとして歩んできたスバルWRX STIは、ランエボの生産終了後もモデルを重ねてきた。

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生き残った側にも、続けるための経営判断があったはずだ。ランエボが選んだのは、続けることではなく、綺麗に終わることだった。

背景には、スポーツセダンという市場そのものが、SUVやクロスオーバーへ重心を移しつつあった時代の転換点があったとも考えられる。ラリーの時代に生まれた四駆スポーツセダンというジャンルは、ランエボの終焉を境に、新型として作られる例が目に見えて少なくなっていく。

23年、10代にわたって走りを磨き続けたランエボは、次の番号を待たずに幕を下ろした。それでも、最後の一台に注がれた熱量と、有終の美を選んだ判断そのものが、このクルマの歴史に対する敬意として記憶されている。

ランエボがI型として1992年に生まれた背景には、WRCグループA規定のホモロゲーション取得のため、年間2,500台以上の市販が義務づけられていたという事情がある。前身のギャランVR-4も同じ規定をクリアして生まれた一台だった。生まれるための条件を課されたクルマが、23年後には自ら終わり方を選べる存在になっていた。

ランエボ ファイナルエディションの名前になぜXが入っていないのか

ファイナルエディションはランサーエボリューションX(CZ4A型)をベースにしているが、正式名称にXの文字は含まれていない。三菱が2014年3月28日に発表したフルモデルチェンジ見送りの方針により、この一台はX型の延長ではなく23年10代続いたランサーエボリューション全体の最後として送り出されたためだ。

ランサーエボリューション ファイナルエディションは何台限定だったのか

国内向けは1,000台限定で、2015年4月10日の先行予約開始と同時に完売した。北米向けには1,600台が用意され、2015年10月に発表されている。

ランサーエボリューションはいつ生産終了したのか

2014年3月に生産終了の方針が示され、2015年8月に発売されたファイナルエディションが最後のモデルとなった。1992年のI型から数えて23年、10代にわたる歴史に幕を下ろしている。

ランサーエボリューションはWRCでどんな実績を残したのか

フィンランドのトミ・マキネンが1996年から1999年にかけて、ランサーエボリューションを駆ってWRCドライバーズタイトルを4年連続で獲得した。この偉業を記念した特別仕様車、ランサーエボリューションVI トミ・マキネンエディションは2000年1月に発売されている。

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ROADECT編集部
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