シトロエン・アミとは 超小型EVの設計とトポリーノとの違い
2020年に登場したシトロエン・アミは、欧州の軽四輪車に分類される2人乗りの電気自動車だ。左右のドアを同じ部品にするなど、コストを抑える設計が特徴で、同じ工場ではフィアットのトポリーノも生産される。設計の背景、14歳から乗る場合の免許の条件、トポリーノとの違い、2台の系譜を解説する。
全長2.41m、定員2名、最高速度45km/h。2020年にシトロエンが発表した「アミ(Ami)」は、フランスで14歳から運転できる電気自動車だ。フィアットの「トポリーノ(Topolino)」は、アミと同じ工場で生産され、諸元もよく似ている。
アミは、小ささの裏に設計の工夫が詰まったクルマだ。左右のドアに同じ部品を使い、外装の多くを同じ金型で作ってコストを抑えた。一方のトポリーノは、1936年に生まれた初代フィアット500の愛称を、名前に受け継いでいる。
アミの成り立ちと設計、トポリーノとの違い、2台が背負う歴史を順にたどる。
シトロエン・アミとは 超小型EVの成り立ち
アミの原点は、2019年3月のジュネーブモーターショーで公開されたコンセプトカー「AMI ONE Concept」だ。反響の大きさを受けて、約1年後の2020年2月27日に市販車として発表された。スクーターや自転車、原付、公共交通に代わる、誰もが使いやすい都市の移動手段という位置づけだった。
欧州では、小型の四輪車がクワドリサイクルと呼ばれる。アミはそのうち、軽量級のL6e、いわゆる軽四輪車に分類される。L6eは、四輪で室内が閉じ、乗れるのは最大2人で、重量が425kg以下、最高速度が45km/h以下、出力が6kW以下という条件で定義される。日本の軽自動車とは別の、欧州の区分だ。
アミの主要諸元は、2020年の発表値で次のとおりだ。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 全長 | 2.41m |
| ミラーを除く全幅 | 1.39m |
| 全高 | 1.52m |
| 壁と壁の間で測る旋回時の円の直径 | 7.20m |
| 重量 | 電池を除いて425kg未満、電池を含めて485kg |
| 電池容量 | 5.5kWh |
| モーター出力 | 6kW |
| 最高速度 | 45km/h |
| 航続距離 | 最大70km |
| 充電時間 | 220Vの家庭用コンセントで3時間 |
航続距離は、初代が最大70km、新型がWMTCという走行モードで75kmと公表されている。充電時間は、初代の3時間に対して、新型は4時間だ。
14歳から乗れるが免許は必要
アミはフランスで14歳から運転できる。ただし、免許がまったく要らないわけではない。必要なのはB区分の普通免許ではなく、原付や軽四輪車向けのAM区分の免許だ。1988年1月1日以降に生まれた人は、道路安全の学科試験に合格し、実技8時間以上の講習を受けて、AM区分の免許を取る。
運転できる年齢は国によって違い、イタリアでは14歳から、ドイツとオーストリアでは15歳から、AM区分の免許で運転できる。フランスでもイタリアでも、高速道路は走れない。
アミの設計 前後と左右を対称にした理由
アミの外観でまず目を引くのは、前と後ろがよく似ていることだ。これは見た目の趣向ではなく、設計の中心にある考え方だ。
ドアと外装を共通にした設計
ドアは右と左で完全に同じ部品で、開く向きだけが反対になる。運転席側はドアの後ろ側に蝶番を置いて乗り降りしやすくし、助手席側は一般的なクルマと同じく前側に蝶番を置く。前後のバンパー、バンパーの下面、車体下のパネルも、前後で鏡に映したように対称になる。
2025年の新型では、ドア、前後の外装パネル、フェンダー、フロントガラス両脇の柱、リヤウインドウが同じ金型で作られる。この対称は、設計の当初から投資を抑えてコストを下げるためのもので、アミらしい個性にもつながっている。
2020年の発表で、スタイル責任者のピエール・ルクレールは、アミの設計は自動車のデザインではなく製品のデザインで、形が機能を決めるものだと語っている。内側から外側へ向かって設計を進め、小さな設置面積でも広い室内を確保したという。
小さな室内に詰めた工夫
室内は2席を横に並べ、運転席は前後に動き、助手席は固定される。助手席の足元には、機内持ち込みサイズのスーツケースが入る収納がある。標準のパノラミックルーフと窓ガラスがボディラインより上の面積の50%を占め、小さな車体でも室内は明るい。側窓は手動で上に傾けて開く方式で、2CVと同じ開き方だ。
2024年の新デザインと広がる仕様
新型アミは、2024年10月14日のパリ・モーターショーで公開された。寸法は先代と変わらないが、前後の顔つきは一新された。ヘッドランプはフロントガラスの下端に上がって黒いまぶたのような縁取りで囲まれ、ブランドの新しいロゴは斜めに据えられて、通行人に語りかけるように見える。前輪の前には積み木を思わせる立方体が付き、バンパーとして四隅を守る。
右前と左後のフェンダーには溝が刻まれた。1948年に生まれた2CVのフロントフェンダーにある細長い切れ込みを想起させる意匠だ。
2025年4月29日には、新型の受注開始日を5月6日と発表し、あわせて「アミ バギー」を加えた。バギーにはドアがなく、代わりに蝶番で開閉する黒い金属の枠を備える。雨風の日には、ジッパー付きのドアカバーをアクセサリーとして付けられる。
用途も広がった。荷物を運ぶ業務向けのカーゴキットや、下肢が不自由な人が車いすを積んで自分で運転できるよう改造した「Ami for All」も用意された。2020年からの累計販売は、2025年4月に75,000台、販売市場は18に達した。
フィアット・トポリーノはアミと何が違うのか
トポリーノは、フィアットが2023年5月31日に車名と最初の画像を公開し、同年7月4日に正式発表した電気自動車だ。アミと同じ軽四輪車の区分に入り、同じモロッコのケニトラ工場で生産される。初代500から名前とデザインを受け継ぐ「500の妹」という位置づけで、デザインの根本には、足すより削ぐほうが美しくなるという考え方がある。
アミとトポリーノの公表値を並べると、次のようになる。
| 項目 | アミ | トポリーノ |
|---|---|---|
| 全長 | 2,410mm | 2,535mm |
| 全高 | 1,520mm | 1,530mm |
| 電池容量 | 2020年の発表値で5.5kWh | 5.4kWh |
| 航続距離 | 新型はWMTCモードで75km | WMTCモードで最大75km |
| 充電時間 | 新型は220Vの家庭用コンセントで4時間 | 4時間未満 |
| 最高速度 | 45km/h | 45km/h |
全長はトポリーノのほうが約12.5cm長く、電池容量の公表値も、アミが5.5kWh、トポリーノが5.4kWhと異なる。一方で、航続距離と最高速度には同じ数字が並ぶ。
トポリーノの室内は、座席を少しずらして配置し、ガラス面を大きく取ることで広がりを出している。座席の間にはスーツケース1個を置ける収納があり、室内の収納は合計63Lだ。
ドルチェヴィータまでの歩み
2023年7月の発表時のラインナップは、閉じた車体の「トポリーノ」と、開いた車体の「ドルチェヴィータ」の2種類だった。色はVerde Vitaの1色で、開いた車体には、乗降口の下側を覆うドアシルと、ドアロープが付いた。
2026年2月13日には新色のコラーロ(Corallo)が加わり、デジタルメーターは3.5インチから5.7インチに拡大した。同年6月30日には、ビーチウェアブランドVilebrequinとの限定車が、閉じた車体に、布製の屋根が開閉するソフトトップを組み合わせた新しいボディで登場した。イタリアとフランスで200台の限定だ。
2026年9月15日に発表された新しいドルチェヴィータは、このソフトトップを限定車の外にも広げ、閉じた車両の保護と開放感を両立させる。ラインナップの拡大が続くなかで、トポリーノは2025年に欧州のクワドリサイクル市場で首位に立ち、シェアは20%だったと、フィアットは説明している。
オペル ロックス-eとアミの共通点
アミと同じ区分には、オペルの「ロックス-e(Rocks-e)」もある。2021年にドイツで受注が始まったこのクルマは、全長2.41m、ミラーを除く全幅1.39m、電池容量5.5kWhと、アミと同じ数字が並ぶ。ドアも左右で同じ部品を使い、助手席側は前側、運転席側は後ろ側に蝶番を置く開き方まで同じだ。
シトロエン、フィアット、オペルは、いずれもステランティスのブランドだ。ステランティスはケニトラ工場でアミ、ロックス-e、トポリーノを生産し、2025年1月からは、この3車種の年産能力を2万台から7万台に引き上げた。同じ工場で作られる3車種のうち、ロックス-eはアミと数字が重なり、トポリーノだけが全長や電池容量の公表値が異なる。
初代トポリーノと2CVの系譜
トポリーノの名前は、1936年から1955年まで生産された初代フィアット500にさかのぼる。小さなサイズから親しみを込めてそう呼ばれた愛称を、新しいトポリーノは車名として受け継いでいる。
アミの系譜は、1948年に生まれた2CVに置かれている。シトロエンは新型アミを2CVの正統な子孫と呼び、77年の隔たりがあっても、シンプルで多くの人が使いやすいという哲学は同じだと説明している。
アミという名前のクルマは、2020年のアミより前にも存在した。1961年に発売されたアミ6だ。設計はフラミニオ・ベルトーニで、後部の窓が逆に傾く、Z字を描くルーフラインが特徴だった。1964年にワゴンが加わると販売でセダンを上回り、累計は1,039,384台に達した。
全長2.5m前後の小さな車体には、1936年の初代500と1948年の2CVが示した発想が、形を変えて引き継がれている。小ささを妥協ではなく設計の出発点にした点で、アミとトポリーノは共通しているといえる。
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1961年発売のアミ6の車名は、設計プロジェクトの呼び名であるAM、敬称のMiss、イタリア語で友人を意味するamiciを組み合わせた音から生まれたと、シトロエンは説明している。設計者のフラミニオ・ベルトーニがイタリア人だったことが影響したとみられる。
アミやトポリーノに免許は必要か
フランスではB区分の普通免許は不要だが、1988年1月1日以降に生まれた人はAM区分の免許が必要だ。道路安全の学科試験に合格し、実技8時間以上の講習を受けて取得する。運転できる年齢は、イタリアが14歳から、ドイツとオーストリアが15歳からだ。
アミの航続距離と充電時間はどれくらいか
新型は、WMTCモードで75kmの航続距離があり、220Vの家庭用コンセントで4時間かけて充電する。初代は最大70kmで、充電時間は3時間だった。最高速度は、初代も新型も45km/hだ。
アミとトポリーノの違いは何か
全長はトポリーノが約12.5cm長く、電池容量の公表値はアミが5.5kWh、トポリーノが5.4kWhで異なる。航続距離は75km、最高速度は45km/hで同じ数字が並ぶ。デザインは、アミが前後と左右を対称にした独自の形で、トポリーノは初代500から名前とデザインを受け継ぐ。
トポリーノの名前の由来は何か
1936年から1955年まで生産された初代フィアット500の愛称にさかのぼる。小さなサイズから親しみを込めて呼ばれた愛称を、新しいトポリーノは車名として受け継いでいる。
この記事について
- 執筆
- ROADECT編集部
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