メルセデスAMG CLE 646発表、646馬力の手組みFRクーペ
メルセデスAMGが「Mythos」シリーズ第2弾となる「CLE 646」を発表した。量産型CLE 53の四輪駆動を捨て、646馬力のV8を後輪だけで受け止める公道仕様のサーキットマシンに仕立て直している。世界限定30台は発表前にすでに完売した。
メルセデスAMG CLE 646とは
メルセデスAMGは2026年9月10日、限定コレクターズシリーズ「Mythos」の第2弾となる「CLE 646 Spezialanfertigung(シュペツィアルアンフェルティグング)」を発表した。車名の「Spezialanfertigung」はドイツ語で「特別製作」を意味し、その名の通り、メルセデスAMGの2ドアクーペ「CLE」シリーズの量産グレードであるCLE 53を土台に、走りに特化した1台へと丸ごと作り変えられている。
心臓部は最高出力646ps(475kW)を発生するAMG M177 EVO型4.0リッターV8ツインターボエンジンで、この数字がそのまま車名になった。生産はドイツ・アファルターバッハのAMG本社工場で、1台ずつ職人の手作業によって行われる。世界限定30台という枠は、ワールドプレミアを迎える前にすでに完売した。
AMG「Mythos」シリーズの第2弾
CLE 646 Spezialanfertigungは、メルセデス・ベンツが展開する極めて希少なコレクターズモデルのシリーズ「Mythos(ミトス)」の第2弾にあたる。第1弾は屋根とフロントガラスを持たない2シーターオープンボディの「AMG PureSpeed」で、世界限定250台のみが生産された。
それに対しCLE 646 Spezialanfertigungは、公道走行が可能なクローズドボディのクーペとしてシリーズに加わった。屋根のないPureSpeedとは対照的に、サーキット走行での実用性能を極限まで高めることに主眼が置かれている。
4WDを捨てて後輪駆動へ
AMG M177 EVO型エンジンは排気量3,982cc、646ps(475kW、6,000〜6,250rpm)を発揮し、最大トルクは850Nmを2,500〜4,500rpmの幅広い回転域で発生する。フラットプレーンクランクシャフトの採用によって回転質量が抑えられ、専用のエンジンマッピングと合わせてスロットルレスポンスの良さにつながっている。排気系は排気系専業ブランドのアクラポヴィッチとの共同開発で、チタンを多用して軽量化しながらV8らしいサウンドを響かせる。
もっとも大きな変更点は駆動方式だ。ベースとなるCLE 53が備える四輪駆動システム「AMG Performance 4MATIC+」は完全に取り払われ、駆動力はすべて後輪のみに送られる。電子制御式のリアリミテッドスリップディファレンシャルが駆動力の伝達と走行安定性を最適化し、専用チューニングのローンチコントロールと組み合わさることで、静止状態から100km/hまで3.9秒、200km/hまで11.4秒に到達し、最高速度は310km/hに達する。300km/hへの到達タイムは、サーキット向けの「Track」設定で36.8秒、公道向けの「Street」設定では36.2秒とされている。
軽量化とワイドボディが生む走行性能
車両重量はベースのCLE 53から約170kg軽減された。ボディシェルは前後の輪距を60mmずつ広げるために補強・拡幅され、フェンダーやフロントエプロン、サイドシル、ボンネット、ルーフ、リアエプロン、ディフューザー、ブートリッド、リアウィングまでカーボンファイバー製の専用パーツに置き換えられている。リアサイドウィンドウとリアウィンドウはポリカーボネート製とし、スターターバッテリーも軽量品に変更された。
足まわりには、モータースポーツ用サスペンションで知られるKWオートモーティブとAMGが共同開発したスチール製コイルオーバーサスペンションを採用した。低速・高速それぞれの伸び側と縮み側を独立して調整できる4ウェイダンパーにより、走行シーンに応じた緻密なセッティングが可能になっている。ブレーキはAMGセラミックハイパフォーマンスコンポジットブレーキで、フロントに420×40mmの内部通気式ディスクと6ピストン固定キャリパー、リアに360×32mmのディスクと1ピストンフローティングキャリパーを組み合わせた。
空力面では、フロントディフューザーを公道用の「Street」とサーキット専用の「Race」の2段階に手動で切り替えられる。「Race」ではベンチュリ効果によってフロントのダウンフォースが増大し、カーボン製リアウィングの角度調整と合わせて、最高速度到達時には合計250kgを大きく上回るダウンフォースを生み出す。専用設計のホイールとタイヤには、AMG ONE用に開発された技術をさらに発展させたものが与えられた。
サーキット仕様のインテリアと手組みの伝統
インテリアも軽量化と走行性能を最優先に設計されている。リアシートと遮音材は取り払われ、駐車支援のPARKTRONICをはじめとする快適装備・運転支援機能の多くが省かれた。標準装備は超軽量のレーシングバケットシートとロールバー、カーボンファイバー製のドアパネルで、オプションのパフォーマンスパッケージを選ぶと6点式ハーネスも用意される。ステアリングホイールはDINAMICA仕上げのモータースポーツ由来の扁平形状で、快適装備の削減によってスイッチ類も整理された。
こうした1台ずつの手組み生産は、AMGにとって初めての試みではない。メルセデスAMGは今回の発表で、1986年に登場した「AMG 300 CE 6.0」、愛称「The Hammer(ザ・ハンマー)」を、アファルターバッハの工房が手がけてきた代表的な1台として挙げている。量産セダンやクーペをベースに手組みで作り替えるという手法は、CLE 646 Spezialanfertigungにも受け継がれている。
なぜAMGはここまで作り変えたのか
メルセデスAMG GmbH取締役会会長のシュテファン・ヴェックバッハ氏は、「非常に理性的なエンジニアたちが、非常に非理性的なクルマを夢見たことから生まれた」と語っている。開発は明確な製品計画からではなく、AMGのエンジニアチーム内で生まれたアイデアから、少人数によるプロトタイプ制作としてスタートしたという。
目指したのは、個別の性能向上を積み重ねることではなく、統合されたパフォーマンスシステムとしてクルマを描き直すことだった。四輪駆動をやめ、快適装備を削り、インフォテインメントまで手放す。より多くの人に届けるための引き算ではなく、走りだけに向き合うための引き算だ。メルセデス・ベンツグループのチーフデザインオフィサー、バスティアン・バウディ氏も「大胆なプロポーションとグリルの大きさが、極限を体現するクルマとしての野心を物語っている」と説明しており、CLE 646 Spezialanfertigungが単なる限定モデルではなく、AMGというブランドの本気度を示す1台であることがうかがえる。
スペックまとめ
| 項目 | 値 |
|---|---|
| エンジン | AMG M177 EVO型4.0L V8ツインターボ(排気量3,982cc) |
| 最高出力 | 646ps(475kW、6,000〜6,250rpm) |
| 最大トルク | 850Nm(2,500〜4,500rpm) |
| トランスミッション | AMG SPEEDSHIFT TCT 9G |
| 駆動方式 | 後輪駆動 |
| 車両重量(DIN) | 1,895kg |
| 全長×全幅×全高 | 4,949mm×1,987mm×1,420mm |
| ホイールベース | 2,875mm |
| 0-100km/h | 3.9秒 |
| 0-200km/h | 11.4秒 |
| 最高速度 | 310km/h |
| 生産台数 | 世界限定30台(完売済み) |
| 価格 | 非公表 |
CLE 646 Spezialanfertigungのボディカラーは、フロントセクションがモハーヴェシルバーマグノ(Mojave Silver Magno)、Bピラーより後ろがオブシディアンブラックマグノ(Obsidian Black Magno)という専用のツートンで塗り分けられている。1台のボディを前後で塗り分けるという手法自体が、量産ラインでは成立しにくい仕上げだ。アファルターバッハの工房が1台ずつ手作業で組み上げているからこそ選べる仕様であり、646馬力のエンジンやワイドボディと同じくらい、この1台が「特別製作」であることを物語っている。
この記事について
- 執筆
- ROADECT編集部
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